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交流電場治療【膠芽腫に対する新たな治療モダリティー】

No.4882 (2017年11月18日発行) P.56

吉本幸司 (九州大学脳神経外科准教授)

飯原弘二 (九州大学脳神経外科教授)

登録日: 2017-11-17

最終更新日: 2021-01-07

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膠芽腫に対する交流電場治療は,体表面用絶縁電極(アレイ)を用いて,非侵襲的に脳内に腫瘍治療電場(TTF)と呼ばれる交流電場を形成し,脳内の正常細胞に比べて急速に増殖する腫瘍細胞の細胞分裂を阻害する新たな治療法である。交流電場脳腫瘍治療システム「オプチューン(NovoTTF-100Aシステム)」は,頭皮に左右4枚のアレイを装着し,1日18時間以上電場を発生させて治療を行うシステムであり,患者はジェネレーターや携帯バッテリーを専用のバッグに入れて持ち運びができ,通常の生活を過ごすことが可能である。この治療法を用いた米国での再発膠芽腫におけるランダム化比較試験(EF11)では,化学療法群と比較して優位性は否定されたが,身体への有害事象が少ないことを理由に,2011年,米国FDAが再発膠芽腫に対する治療機器として承認した。

わが国でも15年に承認されたが,現在では保険収載手続き中のため保険診療ができず,自費診療となっている。その後,欧米では初発膠芽腫に対しても,標準治療へのオプチューンの上乗せ効果を検討したランダム化比較試験(EF14)が行われた1)。中間解析の結果は,標準治療へのオプチューンの上乗せ効果を証明するものであったため,米国FDAは初発膠芽腫に対する治療機器としても承認し,現在では米国の初発膠芽腫に対する標準治療のひとつとして位置づけられている。わが国でも現在,保険収載申請中であるが,膠芽腫に対する治療法のひとつの選択肢として新たな治療モダリティーとなると考えられる。

【文献】

1)Stupp R, et al:JAMA. 2015;314(23):2535-43.

【解説】

吉本幸司*1,飯原弘二*2  *1九州大学脳神経外科准教授 *2同教授

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