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財務省に狙われた調剤報酬の行方[お茶の水だより]

No.4880 (2017年11月04日発行) P.18

登録日: 2017-11-02

最終更新日: 2017-11-02

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▶総選挙が与党の圧勝に終わり、晩秋に差し掛かる中、年末の予算編成を巡る動きが加速してきた。財政制度等審議会では「秋の建議」の取りまとめに向け、大詰めの議論に入っている。診療報酬の改定率について、「ネット2%半ば以上」という大幅なマイナス改定の必要性を主張している。今回標的となっているのは調剤報酬の技術料だ。
▶確かに、調剤医療費のうち技術料部分のここ数年の伸びは、入院や外来の医療費に比べ大きくなっている。しかしこれは患者本位の医薬分業の実現を目指した“副作用”だ。問題は薬局が報酬に見合った働きをしているかどうかではないか。
▶医薬分業のメリットの1つに、薬剤師が行う疑義照会がある。少し古いデータになるが、2015年に日本薬剤師会が委託事業として実施した調査では、疑義照会率は処方箋枚数ベースで2.56%だった。このうち「薬学的疑義照会」は74.88%。また、調査期間中(7日間)に1件も疑義照会を行わなかった薬局は7.58%だった。調査では、疑義照会による薬剤節減効果は約1000億円と推定している。こうした実態が調剤報酬の設定と過不足はないのか、政府や財政当局が判断する前に、中央社会保険医療協議会でしっかり分析する必要がある。
▶しかし薬局側には正論を吹き飛ばすほどの木枯しが舞う。複数大手チェーンで処方箋の集中率を下げるための“付け替え請求”が発覚したのだ。集中率が高い大型門前薬局では通常の半分以下の点数の「調剤基本料3」を算定するが、それを回避するための不正とされる。財政審はこれに乗じて中小でも集中率が高い薬局が多い現状を問題視しており、次期改定では集中率の厳格化など調剤基本料の大幅な見直しが行われる可能性が出てきた。

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