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医薬品等の費用対効果評価方法の合意をどう評価するか?[深層を読む・真相を解く(69)]

No.4880 (2017年11月04日発行) P.20

二木 立 (日本福祉大学相談役・特別任用教授)

登録日: 2017-11-06

最終更新日: 2017-11-01

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高額医薬品等の費用対効果評価導入のための価格調整の方法がようやく固まりました。10月4日の中医協費用対効果評価専門部会は「試行的導入にかかる総合的評価(アプレイザル)の方法について」が大筋合意し、10月25日の同部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会はこの合意を踏まえて、「試行的導入における価格調整のあり方」についても大筋合意しました。私はこの合意は大枠では合理的かつ現実的だと判断していますが、「支払い意思額調査」の実施については「火種」が残っているとも危惧しています。以下、その理由を述べます。

経済評価についての5年前の私の主張

その前に、2012年5月に費用対効果評価専門部会(以下、専門部会)が発足した翌月に本誌に発表した「医薬品の経済評価で留意すべき点は何か?」(本連載⑬、4601号)について述べます。

私は以下のように、「医療経済・政策学の視点から、医薬品の経済評価(費用対効果の検討)を行う上での、3つの留意点を述べ」ました:①経済評価自体に多額の費用がかかる。②経済評価の「国際標準」は存在しない。③バイオ医薬品等の現在の極端な高価格を既定の事実として、経済評価を行わない。 これらのうち、①・②は私の事実認識、③は私の価値判断でした。③についてはさらに、以下のように踏み込んで述べました。

「当該医薬品の費用対効果(純学術的にはQALY1年当たり費用。現実的には余命1年延長当たり費用。さらに簡便には1年間の薬剤費用)を計算し、それを類似の既存薬と比較することにより、その医薬品の薬価引き下げ圧力とすることも十分に可能です。(中略)ただし、このような措置は、患者数が多く、薬価が製薬企業の希望価格より低くても、製薬企業が十分な利益を見込める医薬品に限定すべきであり、患者数がごく限られているオーファンドラッグ(希少疾病用薬)は対象外にすべきと思います」。

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