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上衣腫の分子診断と今後の治療指針【テント上・下を2タイプに分類した4型分類が重要】

No.4878 (2017年10月21日発行) P.56

吉本幸司 (九州大学脳神経外科准教授)

飯原弘二 (九州大学脳神経外科教授)

登録日: 2017-10-21

最終更新日: 2021-01-07

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近年のゲノムワイドな遺伝子解析技術の進歩により,様々な腫瘍の分子分類が報告されている。上衣腫に対してもメチル化解析の結果などから,腫瘍の局在も考慮して9型に分類されることが報告された1)。しかし,この分類には上衣腫以外に上皮下腫や,ほとんどが脊髄に発生する粘液乳頭状上衣腫も含まれているため,臨床上はテント上とテント下の上衣腫をそれぞれ2つのタイプに分類した4型分類が重要である2)。テント上(supratentorial:ST)の上衣腫ではC11orf95とRELAの融合遺伝子が約70%の頻度で認められ,残りの症例の一部でYAP1遺伝子の変異が検出されることから,ST-RELAとST-YAPの2つのタイプに分類できる。ST-RELAはST-YAPと比べて予後不良であると報告されている。RELAとYAP1のどちらの融合遺伝子も持たないST上衣腫に関しては,どのように分類するか結論が得られておらず,悪性グリオーマの混在も考えられるため,そのほかの遺伝子検索が必要である。

テント下(posterior fossa:PF)の上衣腫はPFAとPFBに分類できる。PFAは乳幼児に好発し,外側型が多く,小脳浸潤が強い傾向にあり,予後不良のタイプである。一方,PFBはPFAより好発年齢が高く,正中発生が多く,予後良好とされる。この分子分類は臨床予後によく相関することから,今後の臨床試験ではこの分子分類を基にした試験デザインが必要になるのは確実である。

【文献】

1) Pajtler KW, et al:Cancer Cell. 2015;27(5):728-43.

2) Pajtler KW, et al:Acta Neuropathol. 2017;133(1): 5-12.

【解説】

吉本幸司*1,飯原弘二*2  *1九州大学脳神経外科准教授 *2同教授

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