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【私の一本】砂の器

No.4878 (2017年10月21日発行) P.75

日浅芳一 (徳島赤十字病院院長)

登録日: 2017-10-17

最終更新日: 2017-10-17

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  • 松本清張の原作を映画化した推理サスペンスの傑作。1974年に劇場公開された。松竹からデジタルリマスター版のDVDが発売されている

    山陰への郷愁を搔き立てる『砂の器』

    私は18歳から26歳までの多感な青春時代を山陰で過ごしました。その時代に見聞し、経験したことは強烈な印象として心の奥深く残っています。なかでも、原作をはるかに超えて感動し、かつ山陰への郷愁を搔き立てる映画があります。それは野村芳太郎監督の『砂の器』です。研修医時代に島根県・松江の映画館で見て涙しました。

    幼少期にハンセン病の父親とともに北陸の片田舎を追い出され、迫害を受けながら過酷な放浪の旅を続けた加藤剛演じる天才音楽家・和賀英良。彼が自らの過去をこの世から消し去るために恋人を流産させ、実父を見捨て、恩人の警察官を殺してまで栄光の頂点にたどり着こうとした宿命の物語です。

    残り428文字あります

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