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ダニ媒介性脳炎の疫学,病態の特徴,治療・予防方法 【世界で年間1万人前後が発症し致死率は2~30%,発症初期は頭痛,発熱】

No.4877 (2017年10月14日発行) P.59

児玉文宏 (市立札幌病院感染症内科副医長)

好井健太朗 (北海道大学大学院獣医学研究院 公衆衛生学教室准教授)

登録日: 2017-10-13

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  • 2017年,日本で新たに2人のダニ媒介性脳炎(tick-borne encephalitis:TBE)の患者が発生しました。1993年以降,4人のTBE患者が発生し,うち2人は死亡しています。
    この感染症の疫学,病態の特徴,治療・予防方法について,北海道大学・好井健太朗先生にご教示をお願いします。

    【質問者】

    児玉文宏 市立札幌病院感染症内科副医長


    【回答】

    TBEは,ユーラシア大陸の中北部の広域で発生していて,全世界で年間1万人前後の患者が報告されています。名前の通り,マダニが媒介するダニ媒介性脳炎ウイルス(tick-borne encephalitis virus:TBEV)を原因病原体とする感染症で,自然界ではマダニと野生動物の間で維持されています。感染マダニの吸血により伴侶動物,家畜動物や人を含めた幅広い動物に感染します。また,感染した山羊の生乳(非加熱乳)を介した人への感染も欧州で報告されています。ヒトからヒトへ感染した報告はありません。

    わが国では,1948年に東京近辺で2人のTBEV感染患者が報告されていますが,その後40年以上報告はありませんでした。1993年に北海道南部でTBE患者が報告され,2016年,2017年に相次いで3人のTBE患者が報告されています(2017年8月10日現在)。動物を対象とした血清疫学調査により,北海道では,道央から道南にかけての広範な地域においてTBEVの流行巣が存在していることが示されていますし,また道外においても,西日本を中心に流行巣が存在している可能性が示唆されています。

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