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長期成績から見た肝内結石症の取り扱い:全国疫学調査の解析【非手術的治療の増加が著明だが,長期成績は不明。早い病態解明と成績向上が望まれる】

No.4872 (2017年09月09日発行) P.52

鈴木 裕 (杏林大学消化器・一般外科講師)

杉山政則 (杏林大学消化器・一般外科教授)

登録日: 2017-09-09

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肝内結石症は,良性疾患でありながら完治が難しく,再発を繰り返すことが多い。また,胆管炎・肝膿瘍,肝内胆管癌,肝硬変などの合併は,臨床経過において大きな問題となる。

厚生労働省による大規模な全国多施設調査は1975年より継続的に行われ,その40年の成果がまとめて報告されている1)。診断に関しては75年当初多かった経皮経肝的胆管造影(PTC)や内視鏡的逆行性胆管造影(ERC),点滴静注胆囊造影(DIC)は年々減少し,現在は超音波検査(US)やCT,磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)が中心となっている。治療については,手術的治療の減少と,非手術的治療の増加が著明である。ガイドラインでは肝萎縮・肝内胆管癌合併例,内科的治療不成功例,を外科手術の適応としている2)

また,予後不良因子を解明すべく,98年の横断調査の登録症例を対象に18年間という長期のコホート調査を行った。死亡例は118例(25.1%)で,死因は肝内胆管癌(25例)が最多であった。予後不良因子は「65歳以上の高齢者」「経過中に1週間以上持続する黄疸」「肝内胆管癌の合併」「肝硬変の合併」であった。肝内胆管癌の危険因子は「65歳以上の高齢者」「経過中の胆道狭窄」であった。

これらの調査が,肝内結石症の病態解明の一助となり,成績向上につながることが望まれる。

【文献】

1) Suzuki Y, et al:J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2014;21(9):617-22.

2) 日本消化器病学会, 編:胆石症診療ガイドライン2016. 改訂第2版. 南江堂, 2016.

【解説】

鈴木 裕*1,杉山政則*2  *1杏林大学消化器・一般外科講師 *2同教授

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