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義肢の進歩【電子制御された義肢の開発,国内における普及の遅れ】

No.4870 (2017年08月26日発行) P.54

藤原清香 (東京大学リハビリテーション医学)

芳賀信彦 (東京大学リハビリテーション医学教授)

登録日: 2017-08-24

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近年,ロボット工学の発展とともに新たな義肢の開発や応用が盛んとなり,特に電子制御された義肢は,欠損肢の機能を補うための高性能化が進み,切断者にとってより快適かつ有効な義肢として海外で普及しつつある。

義足では,1997年に世界で初めて遊脚相と立脚相をコンピュータ制御する膝継手(C-Leg®,Ottobock社)が発売され,大腿切断者を歩行時の膝崩れの恐怖から解放する画期的な製品となった。同様に,下腿切断者用の電子制御足部も開発され,斜面や階段昇降の遊脚相で,足継手の角度を最適化するよう自動制御している。

義手では,切断端の筋電位で手の開閉操作を可能にする筋電電動義手が,海外では普及している。近年では5指駆動型電動義手が販売され,筋電信号の組み合わせで手指の把持形態を様々に切り替えて,電動で全指の運動を制御し使用できる。

こうした義肢部品では,先進的な人工知能や各種センサー,生体力学設計を駆使して,より自然な動きを目標に製品開発が進んでいる。また,筋電位による電子制御義肢の操作性向上を目的とした神経筋再支配手術1)の普及とともに,切断者の選択肢は今後さらに増えるであろう。一方で,電子制御された義肢部品は,特例補装具としての申請が必要であり,身体障害者手帳での支給のハードルは高い。国内でもその有用性が明らかになるとともに,制度上の課題克服が期待される。

【文献】

1) Kuiken TA, et al:Lancet. 2007;369(9559):371-80.

【解説】

藤原清香*1,芳賀信彦*2  *1東京大学リハビリテーション医学 *2同教授

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