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ミトコンドリア病についての新しい知見【ミトコンドリア病は潜在的に多数存在し,治療も可能】

No.4868 (2017年08月12日発行) P.49

平松 有 (鹿児島大学神経内科)

登録日: 2017-08-08

最終更新日: 2017-08-07

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ミトコンドリア病は,細胞内のミトコンドリアの働きが低下することで発症する疾患である。病型としては,小児期発症で精神運動発達遅滞を起こすLeigh脳症や,脳卒中様発作を特徴とするME LAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes),てんかん,小脳失調,筋力低下,知能低下,感音性難聴などをきたすMERRF(myoclonus epilepsy associated with ragged-red fibers),外眼筋麻痺をきたすPEO(progressive external ophthalmoplegia),ミトコンドリア肝症,ミトコンドリア心筋症などが知られているが,近年の研究ではこれらの病型分類に当てはまらない潜在的な患者が多数存在するものと考えられている。当科でも共通する16箇所のミトコンドリア遺伝子多型を持ち,感染症や薬剤により発作性に高CK血症,筋障害が誘発されるmitochondrial myopathy with episodic hyper-CK-emia(MIMECK)や1),ミトコンドリア遺伝子の変異(m.602C>T)により,高齢発症の傍脊柱筋などの体幹優位の筋萎縮と脳症をきたした家系を報告しており,疾患の多様性を表している。

治療に関しては,ビタミンやCoQ10,カルニチンなどの補充療法が行われているほか,MELAS患者の脳卒中様発作急性期および予防に対して,L-アルギニンの投与が有効とされている。MIMECK患者の筋力低下に対してもL-アルギニンの有効例を確認しており,治療可能な疾患としての啓蒙や,病態のさらなる解明が待たれる。

【文献】

1) Okamoto Y, et al:Ann Neurol. 2011;70(3):486-92.

【解説】

平松 有 鹿児島大学神経内科

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