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妊娠を希望する女性に対する慢性骨髄性白血病治療【分子遺伝学的寛解(DMR)達成後,TKIを1~2年継続し投与中止。1年以上の治療不要寛解(TFR)維持の場合に妊娠を許可】

No.4867 (2017年08月05日発行) P.65

山本久史 (虎の門病院血液内科)

木村晋也 (佐賀大学医学部内科学講座血液・呼吸器・腫瘍内科教)

登録日: 2017-08-02

最終更新日: 2017-08-01

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  • 将来的に妊娠を希望する30歳代女性の初発慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)を経験しました。チロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)は,妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌で,また内服中は避妊が原則です。CMLの治療効果と妊孕性のバランスを考慮して,どのような治療選択肢を説明し,今後どのようにマネージメントをしていくのがよいでしょうか。佐賀大学・木村晋也先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    山本久史 虎の門病院血液内科



    【回答】

    ABLチロシンキナーゼを阻害するTKIによって,CMLの予後は劇的に改善しました。さらにSTIM試験やDADI試験などの臨床試験で,深い分子遺伝学的寛解(deep molecular response:DMR)を1~2年以上維持できた患者の約半数は,TKIを中止しても治療不要寛解(treatment-free remission:TFR)を持続できることもわかってきました1)。CMLは生命に関わる難病であり,妊娠・出産より治療を優先してもらっています。特に妊娠初期(器官形成期)は催奇性が高く,TKIは絶対に曝露のないように避けています。

    しかしCML患者における妊娠・出産に関する考え方も少しずつ変化してきました。European Leukemia Netでも「妊娠希望の女性では,2年以上のDMRが維持できていれば,インフォームドコンセントを取得した上で,TKI中止を考慮してもよい」と推奨されるようになりました2)

    CMLは,一般的には慢性期が数年続きます。そのため,診断のあと妊娠に至れば,出産までは無治療あるいは催奇性がないと言われるインターフェロン-α(IFN-α)で治療を行うことも不可能ではありません。しかし,より早期のTKIでの治療がより良い予後をもたらすため,勧められる方法ではありません。

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