肺炎や敗血症などの重症感染症では,直接的な肺胞上皮細胞の傷害や,高度な炎症に伴う血中の炎症性メディエーターによる肺の血管内皮細胞の障害により,重症化すると急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症する
ARDSでは,高度な肺虚脱によりガス交換に関与できる正常な肺胞数が極端に少なく,通常の換気では肺の過伸展や肺の虚脱と再開放による剪断力により,人工呼吸器関連肺障害(VALI)を引き起こす
VALIの予防には,肺保護戦略〔低1回換気量,プラトー圧の制限,適切な呼気終末陽圧(PEEP),高二酸化炭素血症の容認,最低限の吸入酸素濃度での管理〕が重要である
肺炎や敗血症などの重症感染症では,直接的な肺胞上皮細胞の傷害や,高度な炎症に伴う血中の炎症性メディエーターによる肺の血管内皮細胞の障害により,酸素化障害を主体とした急性呼吸不全を呈する。
呼吸不全の程度は様々であるが,重症化すれば人工呼吸管理を必要とするような急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)を発症する。ARDSは,感染症,外傷,中毒など,様々な基礎疾患に続発する急性炎症性肺疾患の総称で,血管透過性亢進に伴う肺水腫を特徴とする(表1)。
ARDSの発症要因としては,肺に直接傷害が加わる直接肺損傷(肺性ARDS)と全身性炎症反応に起因する間接肺損傷(肺外性ARDS)がある。肺性ARDSの主原因は肺炎,肺外性ARDSの主原因は肺炎以外による敗血症であり,ARDSの原因疾患のおよそ70~90%が肺炎や敗血症などの重症感染症である。ARDSは一度発症すると急激に呼吸不全が進行する。また,敗血症に起因したARDSは非敗血症性のARDSと比較して死亡率が高いため,注意が必要である1)。
残り3,673文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する