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(2)感染経路別予防策のエビデンスの実践[特集:重症感染症の集中治療─成功に導く管理ポイント]

No.4866 (2017年07月29日発行) P.36

大曲貴夫 (国立国際医療研究センター病院副院長/総合感染症科科長)

登録日: 2017-07-28

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  • 感染防止対策の基本は,標準予防策を徹底しつつ,原因微生物の性質に基づく感染経路別予防策を行うことである

    エボラ出血熱などの出血熱に対しては,空気予防策を含む最大限の対策を行う

    中東呼吸器症候群(MERS)や鳥インフルエンザA(H7N9)に対しては,飛沫予防策と接触予防策を基本とし,気管内挿管などのエアロゾルが生じる手技の際には空気予防策も行う

    1. 標準予防策

    標準予防策は感染症の有無にかかわらず,すべての患者ケアに際して適用する予防策であり,患者の血液,体液(唾液,胸水,腹水,心嚢液,脳脊髄液など),分泌物(汗は含まれない),排泄物,創・粘膜には感染性があるとみなして,医療関連感染症に罹患するリスクを低減させることが目的である。

    (1)手指衛生

    血液,体液,分泌物,排泄物,汚染物に触れたあとや手袋を外した直後,そして患者ケアの間に速乾性アルコール性手指消毒薬もしくは石けんと流水を用いて手指衛生を行う。

    (2)個人防護具(personal protective equipment:PPE)の着用

    ①手袋:血液,体液,分泌物,排泄物,汚染物に触れる場合,粘膜や創のある皮膚に触れる場合に装着する。
    ②ガウン:衣類や露出した皮膚が血液・血性体液,分泌物,排泄物に接触することが予想される処置,および患者ケアの間などに着用する。
    ③マスク,ゴーグル,フェイスシールド:吸引,気管内挿管など血液,体液,分泌物のはねやしぶきをつくりやすい処置や患者ケアの間に着用する。

    (3)汚れた患者ケア器具の取り扱い

    微生物が他の人や環境に付着しない方法で取り扱い,肉眼的に汚染していれば手袋を装着する。また,手指衛生を実施する。

    (4)環境整備

    環境表面,特に患者高頻度接触表面の日常ケア,洗浄,消毒のための手順を作成し,遵守する。

    (5)リネン・洗濯物の扱い

    微生物が他の人や環境に付着しない方法で取り扱う。

    (6)針および鋭利物の扱い

    安全機材を用いる。むき出しの針にリキャップをしてはならない。また,曲げたり折ったりしない。使用した針は手で取り扱わず,鋭利物は使ったその場で耐貫通性容器に入れる。

    (7)換気器具の使用

    患者の蘇生時には,口および口腔分泌物との接触を避けるために,マウスピース・換気バッグなどの換気器具を用いる。

    (8)患者配置

    感染が伝播する危険性が高い,微生物が環境を汚染しやすい,適切な衛生を保持できない,感染後に発症したり不運な結果になる危険性が高い場合は個室管理を優先する。

    (9)呼吸器衛生/咳エチケット

    呼吸器症状のある人には,くしゃみや咳をするときにティッシュなどで口と鼻を覆い,使用後のティッシュは手を触れなくてすむ容器に廃棄すること,気道分泌物で手が汚れたあとには手指衛生を行うことを指導する。

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