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筋骨膜弁を用いた安全で確実な頭蓋底再建法【低侵襲かつ短時間で施行可能。標準術式のひとつになる可能性も】

No.4864 (2017年07月15日発行) P.52

橋口晋一郎 (久留米大学形成外科・顎顔面外科)

清川兼輔 (久留米大学形成外科・顎顔面外科主任教授)

登録日: 2017-07-12

最終更新日: 2017-07-11

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頭蓋底手術では,清潔野である頭蓋内と不潔野である鼻・副鼻腔が交通するため,2つの腔の間を安全で確実に遮断できる再建法が必要である。また,頭蓋底手術は侵襲の大きな長時間手術であるため,低侵襲かつ短時間で施行可能な術式が望ましい。

以上をふまえ,当科では再建材料の第一選択として前頭筋骨膜弁および側頭筋骨膜弁を使用している。その理由は,①同一術野から挙上可能なこと,②手技が容易で短時間で挙上できること,③血行を有しており安全性が高いこと,である。

実際の手術において,まず硬膜欠損を再建する際に重要なことは,血流のある側頭筋骨膜弁と欠損周囲の残存硬膜とを広くオーバーラップさせ,両者に早期の癒着を生じさせることにより欠損部を確実に閉鎖することである。この操作により,髄液漏を確実に防止できるだけでなく,万一局所感染が生じても血流のある骨膜弁がバリアーとなり髄膜炎などの重篤な合併症に至ることはない。

次に重要な点は,前頭洞の後壁と粘膜を除去して頭蓋腔化を図ること,篩骨洞を開放して広く鼻腔にドレナージをつけること,前頭筋骨膜弁を頭蓋底に広めに敷き込むことにより頭蓋腔と鼻・副鼻腔を完全に遮断すること,である。これらの操作により鼻・副鼻腔からの逆行性感染を確実に防止することができる。

本法は低侵襲かつ安全な再建法であり,今後は頭蓋底手術の標準術式のひとつになりうると考えられる。

【解説】

橋口晋一郎*1,清川兼輔*2  *1久留米大学形成外科・顎顔面外科 *2同主任教授

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