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無届で臍帯血投与、「学会としても襟正す」【再生医療学会】

登録日: 2017-07-05

最終更新日: 2017-07-05

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複数の民間クリニックが、他人の臍帯血由来細胞を移植する再生医療を、国に計画を届け出ずに提供していた問題で、日本再生医療学会は4日、緊急会見を開いた。同学会の澤芳樹理事長は、法律違反があった医療機関のうち5施設に学会員が在籍していたことを明らかにし、「氷山の一角かもしれず、学会としても襟を正す必要がある」と述べた。同学会は近く実態把握の調査に乗り出す。

臍帯血など他人由来の細胞を投与する治療は、再生医療等安全性確保法で最もリスクが高い「第一種再生医療等技術」に位置づけられている。実施に当たっては、有識者で構成する「特定認定再生医療等委員会」の意見を聴いた上で提供計画を厚生労働相に提出し、厚労省の厚生科学審議会で審査を受ける必要がある。厚労省は6月28日、この手続きを経ずに治療を提供していた11施設に対し、「第一種」提供の一時停止を命じたと発表した。

澤氏は会見で、「最も厳格な基準の下で提供されるべき『第一種』が法の下に行われていないことは大問題」とした上で、「残念ながら、同様の事案が繰り返される可能性もある」とし、非学会員を含め、エビデンスに基づく治療の提供を呼び掛ける意向を表明した。患者に対しては、①他人由来の細胞を移植する行為、②再生医療学会認定医が勤務していない施設で細胞を移植する行為、③適法性が確認できない行為―を勧められても安易に治療を受けず、かかりつけ医などに相談し、新規の治療を受けるべきか慎重に検討することを推奨した。

■澤氏、臍帯血に「何の規制もない」現状を危惧

澤氏はまた、臍帯血について「現在は主に白血病などの治療に用いられ、再生医療においても有効な治療を提供できる可能性がある」と強調。一方で、他人の細胞を移植するという性質上、さまざまな重篤な反応を起こす恐れがあることから、「専門的な設備を持った医療機関でのみ取り扱える細胞だが、現状では何の規制もなく、誰でも簡単に入手できる」と述べ、強い懸念を示した。


違反事案を「きわめて遺憾で、断固容認できない」と厳しく指弾する澤氏

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