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アルツハイマー病の根本治療薬の現状と今後の課題【経過と臨床診断の閾値の問題から治験が難航。プレクリニカル期への先制医療に関心】

No.4862 (2017年07月01日発行) P.56

中島振一郎 (慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室特任講師)

品川俊一郎 (東京慈恵会医科大学精神医学講座講師)

登録日: 2017-06-29

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  • アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)に対する根本治療薬の治験が多くなされているようですが,どれもなかなか成功に至っていないようです。この現状をどのように理解すればよいでしょうか。根本治療薬が生まれない理由と今後の展望を教えて下さい。
    東京慈恵会医科大学・品川俊一郎先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    中島振一郎 慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室特任講師


    【回答】

    現在発売されているADの治療薬は,コリンエステラーゼ阻害薬とグルタミン酸NM DA受容体阻害薬ですが,これらの薬剤はあくまで症状改善薬の位置づけです。

    ADの病態としてアミロイドβ蛋白(amyloid β protein:Aβ)の過剰蓄積が疾患の上流にあり,それに続いてタウ蛋白の蓄積が起こり,最終的に神経細胞脱落に至るというアミロイドカスケード仮説が多くの研究者に支持されており,それに基づいて根本治療薬の開発が試みられました。Aβをターゲットとして,その産生抑制,クリアランス促進,蓄積したAβの除去,そしてタウを介して毒性を抑制する作用を狙った薬剤です。

    最も早く治験が試みられたのは,Aβ沈着の抑制を目標とした免疫療法でしたが,治験薬AN1792は自己免疫反応による無菌性髄膜脳炎のため,PhaseⅡで治験が中止となりました。その後の調査により,脳内のAβ沈着は改善しているものの,認知機能に有意な改善は認められなかったことが明らかになりました。その後,ヒト化モノクローナル抗体であるbapineuzumabもPhaseⅢまで治験が進みましたが,有効性が示されず2012年に中止になりました。同様のモノクローナル抗体であるsolanezumabも最初の治験がPhaseⅢで失敗し,改めて軽症患者だけに絞った治験を開始したものの,それも2016年に失敗に終わりました。

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