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財政問題への認識こそ、ゼロベースでの見直しを[お茶の水だより]

No.4861 (2017年06月24日発行) P.32

登録日: 2017-06-21

最終更新日: 2017-06-21

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▶通常国会が閉会し、各省庁では8月の予算概算要求に向けた作業が本格化する。概算要求の方向性を示すのは『骨太方針2017』だ。2018年度は診療報酬・介護報酬改定が行われるため、改定財源の規模は改定を巡る議論にも影響する。
▶骨太方針2017では、財政運営を巡る記述で注目すべき変化があった。これまでの「基礎的財政収支(PB)を2020年度までに黒字化」という目標に加え、本文に「同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」と盛り込まれたことだ。
▶ポイントは「同時」という書きぶり。背景には20年度のPB黒字化達成が絶望的という現状がある。また景気は足踏み状態が続く中、金融政策の効果はこれ以上期待できないとの見方が強くなり、一定の財政拡大やむなしという声が、政府でだんだん大きくなってきているのではないか。
▶そうした動きに関係しているのか定かではないが、経済財政諮問会議の3月の会合で、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツ氏(米コロンビア大)が講演し、財政支出を続ける重要性を強調した。日本政府の債務問題について「実際のところ多くの人が言うほど悪くはない」と分析した上で、「少なくとも債務残高に縛られて行動するのをやめるべきだ」と提案。しかし、会合終了後の担当大臣会見でこの部分はなぜか一切触れられなかった。
▶改定率を巡る議論で前提となるのは厳しい財政状況だ。一方、世界的な経済学者がこうした指摘をしている事実をどう見るか。政府は医療をはじめ多くの分野にゼロベースでの見直しを求めている。政府の財政問題に対する認識こそ、ゼロベースで議論を始めることが重要なのではないか。

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