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(3)SGLT2阻害薬と糖尿病合併症の発症抑制効果への期待[特集:上市から3年─SGLT2阻害薬の位置づけ]

No.4860 (2017年06月17日発行) P.41

金﨑啓造 (金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学准教授)

古家大祐 (金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学教授)

登録日: 2017-06-16

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  • SGLT2による尿糖の再吸収は,血糖値の管理のみならず,多彩な機構を介して糖尿病合併症の発症抑制効果を発揮できる可能性がある

    腎機能の低下している症例であっても,単一ネフロンGFRが増加している環境ではSGLT2阻害薬により腎保護効果が得られる可能性がある

    1. 持続高血糖と糖尿病性腎症発症への進展機序

    ナトリウム依存性グルコース輸送担体2(sodium-glucose co-transporter 2:SGLT2)は,糸球体で濾過されたグルコースを近位尿細管より再吸収するために必須である。持続高血糖症例は,濾過される尿グルコースの増加に伴い,近位尿細管におけるSGLT2を介したグルコースとナトリウムの再吸収が増加し,尿細管糸球体フィードバック機構(tubuloglomerular feedback:TGF)の破綻による糸球体高血圧が惹起され,糖尿病性腎症の発症・進展機序に寄与する恐れがある。

    SGLT2阻害薬の投与に伴い,血圧の低下や血清尿酸値の低下,脂質代謝の改善や脂肪肝の改善など,多岐にわたる糖尿病合併症の発症抑制効果が発現する可能性がある。

    2. SGLT2阻害薬の多面的な作用

    1 SGLTの機能

    SGLTは,多くの類似蛋白を有する膜輸送蛋白ファミリーである。腸管や腎近位尿細管の刷子縁に局在し,電気化学的勾配依存性(Na/K-ATPase)にグルコースやアミノ酸,ビタミン,浸透圧物質,各種イオンの輸送などにおいて重要な役割を演じる。特に腎臓の尿細管においては,SGLT1,SGLT2の2つが知られている。

    SGLT1(低容量-高親和性)は,腸管上皮刷子縁と腎近位尿細管下部(S3セグメント)に発現が強く認められる。一方,SGLT2(高容量-低親和性)は,主に腎近位尿細管上部(S1セグメント)に発現が認められる。SGLT1とSGLT2は糸球体で濾過されたグルコースの再取り込みにおいて重要な役割を担っており,一度尿中に濾過されたグルコースは,SGLT2を介して約90%が再吸収され,再吸収を免れた残り10%のグルコースは,より下流に存在するSGLT1により再吸収される。

    2 SGLT2阻害薬の効果

    SGLT2阻害薬は,単独では低血糖を発症しない良好・良質の血糖低下効果作用を発揮するだけでなく,ナトリウム・グルコースの利尿によるヘモダイナミック作用,カロリーロスによる体重減少,血圧低下,血清尿酸値低下,脂質代謝改善,内臓脂肪減少,インスリン抵抗性の改善などにより,複合的な心血管保護効果が期待される。

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