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(2)SGLT2阻害薬の有用性と使用上の注意点─糖尿病の治療薬としての位置づけ[特集:上市から3年─SGLT2阻害薬の位置づけ]

No.4860 (2017年06月17日発行) P.35

加来浩平 (川崎医科大学総合内科学1教室特任教授)

登録日: 2017-06-16

最終更新日: 2017-06-14

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  • SGLT2阻害薬には血糖降下作用に加えて,血圧低下,HDLコレステロール増加など脂質プロファイルの改善,尿酸値低下などの多彩な代謝改善効果がある

    EMPA-REGアウトカム試験結果は,心血管病既往2型糖尿病患者の死亡リスクや心不全の悪化を顕著に抑制することを明らかにし,代謝改善効果に加えて循環動態改善効果が大きく寄与した点が示唆されている

    薬剤の安全性の面から,脱水による悪影響,尿路・性器感染症,ケトン体上昇リスクなどが懸念されている

    リスクはおおむね予測が可能であり,適切な患者選択と指導で回避が可能である。これまでに得られた国内外の報告からは,既存の治療薬と比べて特に安全性に問題があるとの結論は得られていない

    治療法,治療薬の選択にはリスク・ベネフィットのバランスを考慮すべきである

    多大なベネフィットを有する本薬の真価を最大限に発揮させる上で,適切な患者選択と指導が重要なポイントとなる

    1. SGLT2阻害薬の有効性

    ナトリウム依存性グルコース輸送担体2(sodium-glucose co-transporter 2:SGLT2)阻害薬は,インスリン作用からは独立した作用機序により,多彩な代謝改善効果が期待される。

    臨床試験報告から,低血糖リスクの少ない血糖改善,体重減少,降圧,脂質代謝改善,血清尿酸値の低下,肝機能改善など,多面的な代謝改善効果を発揮することが明らかにされている(図1)1)

    1 血糖改善効果

    国内の臨床試験では,単独療法,併用療法において0.5~1.5%程度のHbA1cの改善効果が得られ,開始時のHbA1c値が高いほど強い効果が得られている2)~4)。血糖低下効果には,尿グルコースの排泄に加えて長期的には糖毒性の改善による膵β細胞機能改善,インスリン抵抗性改善効果が寄与すると考えられる。腎機能低下例では,HbA1cの低下効果は減弱する。

    2 体重減少効果

    尿中へのグルコースの排泄促進で余剰エネルギーが喪失し,体重は減少する。開始から6カ月間は徐々に減少し,2~3kgの減少を認める。脂肪量の減量が主で,除脂肪体重も減少する5)。適正な食事療法の指導は重要で,極端な糖質制限を避けるように指導する。

    3 降圧効果

    2型糖尿病では,インスリン抵抗性による尿細管からのナトリウムの再吸収の増加と交感神経系の活性化が血圧上昇をもたらし,患者の50%以上は高血圧症を合併している。SGLT2阻害薬は,短期的には浸透圧利尿による尿量の増加に,長期的には体重減少,とりわけ内臓脂肪の減少にそれぞれ寄与すると考えられ,脈拍数の増加を伴わない。

    メタ解析の報告では,プラセボと比較して収縮期血圧で-3.77mmHg,拡張期血圧で-1.75mmHgを認めている6)。国内の臨床試験では,プラセボとの差は収縮期血圧で-4.4mmHg,拡張期血圧で-2.7mmHgと報告されている3)

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