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胞状奇胎除去術回数の検討【胞状奇胎に対する子宮内再掻爬術は必要か?現在臨床試験施行中】

No.4859 (2017年06月10日発行) P.48

新美 薫 (名古屋大学産婦人科)

登録日: 2017-06-07

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胞状奇胎は受精の異常による異常妊娠で,わが国では約300~500妊娠に1例にみられ,発生は欧米より3倍近く多い。胞状奇胎の10~20%は,除去術後に侵入奇胎や絨毛癌などの化学療法(抗癌剤治療)を要する絨毛性腫瘍を続発する。

胞状奇胎除去術は流産と同じ術式であるが,1回目の除去術による病理検査で胞状奇胎と診断された場合には,1週間後に2回目の除去術を行うことがわが国では標準治療となっている。近年は妊娠10週頃までに胞状奇胎の手術が行われているが,今から40年前までの超音波診断法がなかった時代には,妊娠週数が進んだ時点で除去術が行われていた。子宮内の胞状奇胎部分が増えて子宮筋層が薄くなり,手術での子宮穿孔を予防するためと,子宮内容物を完全に除去するために2回にわけて行っていた手術法が,わが国では現在まで続いている。一方,欧米では除去術は1回のみであるが,胞状奇胎後続発症の発症率は,欧米と日本では差がない。

最近10年間に当院で治療された胞状奇胎症例を検討したところ,2回目の手術時に子宮内に胞状奇胎細胞が残っていたことと,続発症発症率には関係がなかった。すなわち,除去術の施行回数は,続発症の発症率とは因果関係がないことが予想される。現在,当院では臨床試験「胞状奇胎患者に対する子宮内容除去術施行回数変更の検討」を実施している。除去術が1回でも2回でも胞状奇胎後の続発率が変わらなければ,今後わが国で胞状奇胎の治療を受ける患者の負担を減らすことができると考える。

【解説】

新美 薫 名古屋大学産婦人科

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