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せん妄の薬物療法【抗精神病薬は基本的に,自傷他害の恐れが強い場合にのみ使用】

No.4857 (2017年05月27日発行) P.53

中嶋宏貴 (名古屋大学医学部附属病院 地域連携・患者相談センター)

登録日: 2017-05-23

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はじめに,せん妄の診療では「どの薬にするか」よりも,以下の2点のほうが重要である。

①除去可能な要因の除去:原疾患の十分な治療,脱水症や便秘の解除,不要なカテーテル類の抜去,苦痛(疼痛や呼吸苦)の除去等
②支持療法:眼鏡や補聴器の使用,昼間は部屋を明るくし見当識を維持する工夫,家族の同席等

上記を十分に行った上で薬物療法を検討する。主体は抗精神病薬であるが,基本的にその使用は,自傷他害の恐れが強い場合に限るべきであって,もぞもぞ動いて眠らないなどの理由では使用しない。また,目標は当初問題となった症状の改善であり,眠らせることではない。点滴薬はハロペリドールのみである。内服薬はオランザピン,クエチアピン,リスペリドン,ペロスピロンの4剤を半減期,鎮静効果,剤形,糖尿病の有無などを指標に使いわけられれば十分であろう。ベンゾジアゼピン系薬剤やヒドロキシジンの単剤使用は,せん妄を悪化させる可能性が高いため避ける。

近年,ラメルテオンのせん妄予防効果が報告された1)。劇的な効果はないが安全性は高いため,ひとまず処方しておくというのも選択肢であろう。近年発売されたスボレキサントのせん妄予防・治療における位置づけは,現段階では不明である。

最後に繰り返すが,せん妄の診療で重要なことは薬剤選択よりも「除去可能な要因の除去」と「支持療法」である。

【文献】

1) Hatta K, et al:JAMA Psychiatry. 2014;71(4): 397-403.

【解説】

中嶋宏貴 名古屋大学医学部附属病院 地域連携・患者相談センター

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