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遠隔診療、「社会実装」へのカウントダウン[お茶の水だより]

No.4855 (2017年05月13日発行) P.15

登録日: 2017-05-11

最終更新日: 2017-05-11

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▶ICTを活用した医師対患者の遠隔診療が2020年度診療報酬改定で本格導入される可能性が高まってきた。自民党の「経済構造改革に関する特命委員会」(茂木敏充委員長)がまとめた最終報告に、「『遠隔診療』の社会実装」が盛り込まれたのだ。政府の方向性とも軌を一にしており、いわば政府与党が一体で進める国策と捉えるべきだろう。
▶最終報告が示すように、離島や中山間地域にとどまらず、都市部でも移動や待ち時間など通院に関する負担が軽減されることになれば、恩恵を受ける人は少なくない。受診へのハードルが低くなることで健康増進に資するとの見方も可能だ。しかし、医師は遠隔診療のトレーニングを受けてきていない。医療の質を担保するためにも「かかりつけ医による」「対面診療との組み合わせ」などの要件を設け、対面診療の補完という原則を維持する必要がある。
▶対象疾患をどこまで拡大するかという問題もある。塩崎恭久厚生労働相は、次期18年度改定で「糖尿病等の生活習慣病患者の効果的な指導・管理」と「血圧、血糖等の遠隔モニタリングを活用した、早期の重症化予防」などを診療報酬上で評価する、と打ち出している。このほか精神科におけるカウンセリングなどにも有効かもしれない。一方、触診や処置が多い診療科には馴染まないだろう。
▶遠隔診療が進む流れはもはや止められないが、急速に普及するとも考えにくい。遠隔診療で診断ミスなどがあった場合は、その医師に責任が生じてしまうからだ。政府や厚労省が遠隔診療の普及を推進するのであれば、患者の利便性だけではなく、医師が安心して診療に臨めるような仕組みを構築するという視点が不可欠ではないか。

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