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(2)甲状腺癌における手術療法─適応と術式 [特集:甲状腺癌の手術適応を見きわめる]

No.4745 (2015年04月04日発行) P.26

杉野公則 (伊藤病院副院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-21

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  • 甲状腺癌の大部分を占める分化癌は乳頭癌と濾胞癌にわけられるが,生物学的振る舞いや臨床的問題点が異なるので個別に検討すべきである

    多くの微小乳頭癌は増大せずに経過するので.手術適応には一考を要する

    乳頭癌の手術方針は病巣の広がりや予後因子を勘案して,甲状腺切除範囲やリンパ節郭清範囲を決定することが望ましい

    濾胞癌は術前に診断することが難しい場合が多い。濾胞性腫瘍を疑ったら腺葉切除を行い,診断をつける

    組織学的に濾胞癌と診断されたら,遠隔転移の危険因子を勘案して補完全摘や放射性ヨウ素(131I)内用療法を行う

    1. 甲状腺癌における手術療法とは

    甲状腺癌の生物学的振る舞いや悪性度はその組織型に大きく左右される。術前の適切な検査により組織型を推察し,治療方針を構築する必要がある。一般的に,甲状腺癌治療においては手術療法が主体となる。組織型や進行度によって甲状腺切除範囲やリンパ節郭清の有無・範囲を適切に決定する必要がある。また,放射性ヨウ素(131 I)内用療法やアブレーションも後療法として重要である。これらを施行する際には甲状腺全摘されていることが前提となるが,甲状腺全摘により永続的な甲状腺機能低下症は必発である。
    甲状腺分化癌においては基本的に低悪性度の腫瘍が大部分であることから,予後因子や併存疾患などを勘案して治療方針を決定する必要がある。また,乳頭癌と濾胞癌では生物学的な振る舞いが異なり,治療方針もわけて考える必要がある。本稿では,甲状腺癌の大半を占める分化癌(乳頭癌,濾胞癌)について適切な手術方法の選択について概説する。

    2. 甲状腺乳頭癌の手術適応と術式

    乳頭癌は甲状腺癌の約90%を占める,最も頻度の高い甲状腺の悪性腫瘍である。本疾患の進行はきわめて緩徐であり,基本的に予後も良好である。周辺臓器への浸潤能は強く,リンパ節転移はしばしば認められるが,遠隔転移は少ない。再発はリンパ節に最も多く,残存甲状腺からの再発は少ない。本症により致死的になることは少ないが,死因の多くは遠隔転移によるものである。本症の術前診断は穿刺吸引細胞診により,ほぼ確実に診断がなされる。
    また,近年の超音波検査機器の解像度の向上により,微小な結節や小さな転移リンパ節も描出可能であり,これらも超音波検査下での穿刺吸引細胞診により,ほぼ確実に診断できる。遠隔転移の頻度は低いものの,その多くは肺転移であり,CTで把握できる。周辺臓器への浸潤の有無も頸部CTやMRIで診断することができるが,反回神経への浸潤は術中の判断になり,甲状腺外に進展している場合には声帯麻痺の有無を確認することが望ましい。このように,手術前の検査により乳頭癌の進展具合をある程度は認識できる。それらをふまえて手術方針を考えることが肝要である。

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