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発熱・抑うつを呈して紹介された70歳,女性 [国立国際医療研究センター臨床カンファレンス(20)]

No.4848 (2017年03月25日発行) P.56

登録日: 2017-03-23

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    司会&総合診療科指導医K:今日は膠原病科からの症例です。確かこの症例は当初は総合診療科で診ていましたよね。それではよろしくお願いします。

    担当医(初期研修医):よろしくお願いします。今回の症例は生来健康な70歳,女性です(スライド1・2)。




    「抑うつ」をどう考える?

    司 会:みなさん,この抑うつはどう考えますか。

    会 場:この方はうつ病の既往はないわけですよね。経過が早いので内因性のうつというより,何か身体疾患が隠れているのではと思いました。熱もありますし。

    司 会:鋭い指摘ですね。そのセンスは重要です。

    会 場:うつ病や双極性障害の家族歴は?

    担当医:ありません。

    会 場:脳のMRI,髄液検査はやっておきたいです。

    司 会:それはなぜでしょう。

    会 場:急性発症のうつだと,脳の器質因の有無の精査から入りたいと思いました。

    精神科医K:その通りです。以前の経過の詳細を聞く必要はありますが,ここまで急性発症だといわゆる内因性の気分障害は疑えません。ご指摘の通り,まず器質因の精査ということでよいと思います。

    司 会:ここは重要なポイントでしたね。

    精神科医K:そうです。こういうとき,実地医家の先生でも,救急外来でも,総合病院の一般内科の先生でも「まず精神科へ紹介」と思いがちですが,紹介されても私たちもまず身体疾患の精査から始めるんです。なので,急性あるいは亜急性経過の精神症状というのは,本当は内科の先生から診たほうがいいのだろうと,いつも思います。

    司 会:なるほど。実地医家の先生が診たら,まず総合病院,つまり内科も精神科もある病院の内科に紹介したほうがいいというわけですね。では進めましょう。

    担当医:入院時の現症です(スライド3)。


    司 会:その前にもう少し,症状全般について聞きたいですね。面談してわかったことはありますか。

    担当医:症状を全然訴えませんでした。

    司 会:訴えでなく,行動面ではどうですか。

    担当医:多飲が認められました。スライド3で提示するつもりでしたが多尿もあります。前医からの情報で1日約4000mLの尿量があることが確認されています。

    会 場:眼は,これは強膜炎ですか。

    担当医:その通りです。眼科受診し,両側強膜炎の診断で,ステロイド点眼が開始されました。

    会 場:難聴や眼の充血も,最初の抑うつ発症と同時期ですか。

    担当医:はい。多飲・多尿もその頃からだったようです。

    司 会:プロブレムがまとまってきましたね。発熱,抑うつ,難聴,多飲・多尿,両側強膜炎ですね。進めて下さい。

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