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術中輸液管理 【適正化による利点は多いが,「適正」を判断する指標が未確定であるなど,課題も多い】

No.4845 (2017年03月04日発行) P.61

松﨑 孝 (岡山大学麻酔・蘇生学)

森松博史 (岡山大学麻酔・蘇生学教授)

登録日: 2017-03-02

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術中輸液管理の適正化によりもたらされる利点は少なくない。過剰な輸液を避けることによって術後合併症が軽減(創部感染の軽減,術後呼吸器合併症の軽減)するだけでなく,腸管浮腫の軽減によって早期の食事開始・離床が可能になる。これらによって,病院滞在日数の短縮,医療コストの軽減がもたらされ,臨床的なアウトカムの改善につながる可能性が報告されている。

現在の問題点として,何を指標に適正であると判断するかの基準が定まっていないことや,輸液適正化に伴う臨床的アウトカム改善のメカニズムに関して不明である点が挙げられる。

術中に投与された過剰な輸液に関して,血管内から「サードスペース」へ逃げるという概念が当たり前のように使用されていたが,現在ではその神話は崩壊し,血管内皮細胞に存在するグリコカリックスが障害を受け,投与された輸液が細胞間質へ逃げることで浮腫を生じて細胞の障害が生じる,と考えられるようになった。輸液の指標としての中心静脈圧の信頼性は低く,臨床的役割は減少している。

輸液の適正化を図る上で,動脈圧ラインの波形を利用した目標指向型の術中輸液管理が提唱されているが,どの指標が優れているかに関しては現在も議論されている。輸液負荷が必要な際は,膠質液としてアルブミンとヒドロキシエチルデンプン130000が使用されているが,投与量に関する有効性や安全性に関しては,今後も検討が必要である。

【解説】

松﨑 孝*1,森松博史*2 *1岡山大学麻酔・蘇生学 *2同教授

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