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認知行動療法を認知症患者にどう適用するか? 【精神症状・行動症状改善をターゲットにする】

No.4844 (2017年02月25日発行) P.62

樫村正美 (日本医科大学医療心理学教室講師)

登録日: 2017-02-22

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  • 認知行動療法を軽症の認知症患者に実施する実際的な方法について。

    (質問者:千葉県 M)


    【回答】

    英国で実施された認知行動療法(cognitive-behavioral therapy:CBT)の効果検証に関する臨床試験1)では,軽度から中等度の認知症患者にCBTが実施され,患者の抑うつや不安症状の改善効果が報告されています。しかし,わが国ではこうした試験はいまだに実施されていません。したがって,今回お答えできる内容は国内でのトライアル段階の経験に基づくものであることをご理解下さい。

    (1)ターゲットの選定
    認知症患者を対象とした場合,CBTの主な治療のターゲットを何とするかが重要になります。先行研究では,認知機能の改善ではなく,精神症状や行動症状の改善にターゲットを絞って介入が行われています。

    (2)実施セッション例
    英国の取り組みでは全10回のセッションが実施されますが,筆者は患者や家族の通院の負担を考慮し,全8回で実施しています。セッションの構成については,最適解があるわけではありません。CBTには様々なスキルを学習するためのモジュールがありますが,どれをセッションに組み込むかは患者の状態次第になります。

    筆者のプログラムを例に挙げれば,初回で心理教育(ストレス,抑うつや不安を認知行動モデルに則って説明),2,3回目で行動活性化(行動と感情のつながりを意識して,日常生活で患者自身が楽しめる活動,やりたい・やってみたい活動を意識的に取り入れながら,行動を変えると気分も変わることを体験),4,5回目でリラクセーション(気分と身体のつながりに注目し,呼吸法や筋弛緩法などの簡易な方法を練習),6,7回目で認知再構成(普段考えてしまいがちなネガティブな思考を一緒に探し出し,反証作業をホームワークに課す)を行います。そして,最終回ではこれまで学習した内容を振り返り,今後も自宅で継続していくための計画を練り,セッションを閉じます。

    構成を考える際,認知機能低下の度合いや患者のモチベーションに合わせ,軽度であれば認知的な内容を先に,そうでなければ比較的理解しやすく,取り組みやすい行動的な内容を先に実施する工夫もケースに応じて必要になります。

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