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ゲノムデータの持つ個人識別性 【個人の特定が可能となってきたため,一定の規律に基づいた管理が重要】

No.4843 (2017年02月18日発行) P.56

大澤資樹 (東海大学基盤診療学系法医学教授)

登録日: 2017-02-16

最終更新日: 2017-02-14

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2015年に個人情報保護法が改正され,DNAを構成する塩基配列が個人識別符号と規定された1)。個人情報とは「特定の個人を識別することができるもの」と定義され,一般に,氏名などの基本情報と結びつけられて保管されている情報に対して,別の情報が一致することで個人が特定される。たとえば,顔画像であれば,本人ないし本人の写真と対照して具体的に人物を同定できるので,個人情報と言える。

ゲノムに関して言えば,どの程度の情報量がある場合に識別性を有する情報と言えるのかが問題となる。最新の次世代シークエンサーを利用した全ゲノム解析が個人識別性を有するのは明らかであるが,単にABO式血液型だけからでは決して個人の特定には至らない。この課題は,身元不明者に対する個人同定や犯人捜査における法医学での実践そのものである。今回の専門家による研究会では,日本人集団を仮定したときに,独立した一塩基多型(SNP)で40以上,法医学領域で頻用されている単純な4塩基の繰り返し構造(STR)で9座位以上のデータ量があると,特定の個人に到達してしまう可能性があると判断した。

今後,ゲノム医療が発展することが予想されるが,個人情報保護法では利用目的の特定,安全管理措置などの取り扱いについて一定の規律を設けており,診療の中で得られたゲノム情報の管理が重要になる。

【文献】

1) 個人情報保護委員会:個人情報の保護に関する法律施行令改正案の骨子(案). [http://www.ppc.go.jp/files/pdf/280715_siryou1-1.pdf]

【解説】

大澤資樹 東海大学基盤診療学系法医学教授

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