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DSM-5における自閉症スペクトラム障害 【質的評価から量的評価へ。下位分類を削除し重症度を導入】

No.4843 (2017年02月18日発行) P.54

大橋 圭 (名古屋市立大学新生児・小児医学)

齋藤伸治 (名古屋市立大学新生児・小児医学教授)

登録日: 2017-02-15

最終更新日: 2017-02-14

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2013年5月に米国精神医学会の「精神障害の診断と統計の手引き(diagnostic and statistical manual of mental disorders:DSM)」が「DSM-Ⅳ-TR」から「DSM-5」へと改訂された1)。その中で,「DSM-Ⅳ-TR」における広汎性発達障害は下位分類が削除され,自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)にまとめられた。これは,自閉的な特徴が一般集団まで連続的に分布しているという,スペクトラムの概念を重視した診断名である。

ASDの診断基準は「社会的コミュニケーションの障害」と「限定された反復的な行動」で構成され,従来の質的な異常ではなく,量的な異常で評価される。すなわち,自閉的な行動の有無ではなく,行動の程度の強さで判断する。加えて,障害の重症度の評価が導入され,支援の必要性に応じてレベル1~3の3段階で評価を行うこととなった。その目安は大雑把なものであるが,従来のDSMにはない障害の程度を量的に判定する新しい考え方である。

また,ASDの診断基準に「社会等の機能の重大な障害を引き起こしている」ことが明記された。今後は,これまで以上に本人の特性のみではなく,社会的状況を考慮してASDの診断を行う必要がある。

【文献】

1) American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition. American Psychiatric Pub, 2013.

【解説】

大橋 圭,齋藤伸治 名古屋市立大学新生児・小児医学 教授

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