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遺伝性乳癌・卵巣癌症候群の取り扱い 【血縁腫瘍歴の聴取より推定。BRCA1およびBRCA2の病的遺伝子変異保持者にはリスク低減卵巣卵管切除術(RRSO)などの予防処置が勧められる】

No.4838 (2017年01月14日発行) P.56

寺井義人 (大阪医科大学産婦人科学准教授)

青木大輔 (慶應義塾大学産婦人科学教室婦人科教授)

登録日: 2017-01-11

最終更新日: 2017-01-10

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  • 遺伝性乳癌・卵巣癌症候群の取り扱いについて教えて下さい。慶應義塾大学・青木大輔先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    寺井義人 大阪医科大学産婦人科学准教授


    【回答】

    婦人科実地臨床においても,遺伝性乳癌・卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer:HBOC)症候群だけでなく,リンチ症候群,ポイツ─ジェガース症候群,カウデン症候群などの遺伝性腫瘍に遭遇する可能性があります。これらの遺伝性腫瘍は常染色体異常優性遺伝の遺伝形式をとるため,血縁腫瘍歴を聴取することにより推定が可能です。

    HBOCの原因遺伝子であるBRCA1およびBR CA2遺伝子(BRCA1/2)変異陽性例では,70歳までに約40%で卵巣癌を発症すると報告されています。米国産婦人科学会(ACOG)と米国婦人科腫瘍学会(SGO)は,①乳癌と卵巣癌の病歴がある女性,②卵巣癌を発症し第二度近親者以内に卵巣癌もしくは閉経前の乳癌家族歴がある女性,③卵巣癌を発症したアシュケナージ系ユダヤ人の女性,④50歳以下で乳癌を発症し,第二度近親者以内に卵巣癌もしくは男性乳癌の家族歴がある女性,⑤40歳以下で乳癌を発症したアシュケナージ系ユダヤ人の女性,⑥第二度近親者以内にBRCA1/2変異を有する家族歴がある女性,などの特徴が当てはまる場合には,HBOCである可能性を念頭に置いた遺伝カウンセリングを推奨するとしています。遺伝カウンセリングでは関連情報の提供,意思決定に向けての補助,非指示的な対応が適切に行われる必要があり,心理的・社会的サポートを通してクライアント自身が自律的な意思決定を行えるように支援します。BRCA1/2の遺伝学的検査は,このような十分な遺伝カウンセリングの後に行われます。

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