ネーザルハイフロー(high-flow nasal cannula:HFNC)療法は,経鼻カニューレで高流量の混合ガスを投与できる,新しい概念の酸素療法である。その特徴として,①高流量ガスが死腔のCO2を洗い出す,②PEEP効果(咽頭に陽圧を発生させ,肺胞虚脱予防効果がある),③患者の影響を受けずに正確な酸素濃度を供給できる,④加温加湿器と熱線入り回路により十分な加湿能力がある,などが挙げられる。
近年,従来の呼吸療法との比較研究が相次いで発表され,HFNCの有用性が示されつつある。心臓血管外科術後症例でのBiPOP試験1)ではNPPVと,また急性呼吸不全を対象としたFLORALI試験2)では,フェイスマスク,NPPVとの間で比較検討されているが,いずれも対照群と同等の治療効果が示された。加えて装着時の快適さを考慮した場合,HFNCは今後ますます使用範囲が拡大すると思われる。
また,抜管後のHFNC療法の効果の検討3)では,再挿管率,呼吸不全の発症率がともに減少していることから,再挿管を回避できる有効な手段としても期待できる。
【文献】
1) Stéphan F, et al:JAMA. 2015;313(23):2331-9.
2) Frat JP, et al:N Engl J Med. 2015;372(23):2185-96.
3) Hernández G, et al:JAMA. 2016;315(13):1354-61.
【解説】
佐々木勝教,*坂本哲也 帝京大学救急医学 *主任教授