機能性消化管疾患のRome基準は,2016年5月に10年ぶりにRome ⅢからRome Ⅳ基準へと改訂された。今回,大きな疾患概念の変更はなかったものの,代表的な疾患として機能性食道障害,機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD),過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)などが含まれている。これらの病態は1つの原因で説明することはできないが,消化管のどの部位においても化学刺激や伸展刺激に対する知覚異常が指摘されている1)。
上部消化管では酸などの化学刺激が,FDおよびIBSでは胃および直腸の伸展刺激がこの知覚異常に関わっており,いずれの疾患においても弱い刺激で症状が発現し,過敏性が指摘されている。FDでは,十二指腸で酸や脂質といった管腔内の化学刺激に対する過敏性もみられる。
この知覚過敏の発生には,ストレスによる肥満細胞の脱顆粒や侵害受容体の感受性変化,遺伝などが関与していると言われている。消化管粘膜バリア機能が傷害され,粘膜内腔側の抗原が侵入しやすくなると,肥満細胞や好酸球などによる微細炎症が発生し,炎症性サイトカインの放出は増加する。これが炎症や症状発現の悪循環をまねくと考えられている。
【文献】
1) Drossman DA, et al:Gastroenterology. 2016; 150(5):1262-79.
【解説】
1)大島忠之,2)三輪洋人 兵庫医科大学内科学消化管科 1)准教授 2)主任教授