株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

手術非適応の頭頸部非扁平上皮癌に対する治療【重粒子線治療は線量集中性に優れ,高い抗腫瘍効果が期待できる】

No.4834 (2016年12月17日発行) P.54

小藤昌志 (放射線医学総合研究所病院頭頸部腫瘍科科長)

登録日: 2016-12-14

最終更新日: 2016-12-08

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

頭頸部非扁平上皮癌は全頭頸部癌の約1割と稀な疾患群であるが,放射線治療や抗癌剤に対して抵抗性を示すことが多い。そのため,手術非適応症例に対しての根治的な治療法が存在しない。代表的な組織型である腺様囊胞癌や粘膜悪性黒色腫に対して,米国の全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)のガイドラインでは,手術非適応症例においては臨床試験への参加が推奨されている。

重粒子線治療は放射線治療のひとつであるが,通常用いられるX線と比較して,高い抗腫瘍効果が期待でき,また,線量集中性にも優れるため,多くの臓器が集中し,複雑な構造を呈する頭頸部領域の非扁平上皮癌に対して有望な治療法である。1994年の重粒子線治療開始当初より,この疾患群に対しての臨床試験が行われ,その有用性が示されてきた1)。特に,粘膜悪性黒色腫については,対象の多くが手術非適応であるにもかかわらず,手術成績に匹敵する成績が得られている2)。また,2013年版の『頭頸部癌診療ガイドライン』に,手術非適応の頭蓋底腫瘍,鼻・副鼻腔腫瘍に対しての重粒子線治療を含む粒子線治療が推奨グレードC1で記載されている。

現在,頭頸部非扁平上皮癌に対する重粒子線治療は先進医療であるため,患者の費用負担が大きい。そのため,経済的な理由から重粒子線治療を選択できない患者が存在する。この疾患群に対する重粒子線治療の早期保険収載が望まれる。

【文献】

1) Mizoe JE, et al:Radiother Oncol. 2012;103(1): 32-7.

2) Yanagi T, et al:Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2009;74(1):15-20.

【解説】

小藤昌志 放射線医学総合研究所病院頭頸部腫瘍科科長

関連記事・論文

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top