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肝前性門脈圧亢進症に対する外科的治療【meso-Rexバイパス手術が有効。バイパス設置の工夫により適応の拡大が可能に】

No.4832 (2016年12月03日発行) P.58

高見澤 滋 (長野県立こども病院小児外科部長)

新開真人 (神奈川県立こども医療センター外科部長)

登録日: 2016-12-01

最終更新日: 2016-11-28

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  • 肝前性門脈圧亢進症による症状として食道・胃静脈瘤からの出血,脾機能亢進による汎血球減少などがあります。内視鏡的処置や成長による側副血行路の発達で,静脈瘤から出血しなくなっても脾機能亢進による血小板減少,門脈肺高血圧症,肝肺症候群などに対して外科的手術(シャント手術,脾摘術など)が必要な症例があると思われます。そのような症例に対して,どのタイミングで,どの手術を行うべきか,神奈川県立こども医療センター・新開真人先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    高見澤 滋 長野県立こども病院小児外科部長


    【回答】

    小児の肝前性門脈亢進症の代表疾患は肝外門脈閉塞症(extrahepatic portal obstruction:EHO),肝外門脈圧亢進症とも呼称されます。肝実質病変を伴わず肝外門脈の血流障害をきたす原因不明の疾患で,門脈圧亢進症(門亢症)に伴う食道胃静脈瘤,脾機能亢進症(脾腫や汎血球減少症)に加え,時に成長障害や肝肺症候群,門脈肺高血圧症を発症します。治療としては,静脈瘤硬化・結紮療法,interventional radiology(IVR)を用いた血管内治療であるバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded ret­rograde transvenous obliteration:B-RTO)や部分的脾塞栓術などの非手術的治療が第一選択とされ,外科手術では治療困難例に限って,門脈大循環シャント手術や選択的シャント手術,脾摘および下部食道/胃上部の血行郭清術などの対症療法的な手術が選択されてきました。このような治療をしている間に,思春期を過ぎるまでにEHPHの症状は消失すると一般に考えられていましたが,実際には消化管出血が反復して治療に難渋したり,巨脾のため日常活動が制限されたり,肺高血圧症で死亡するなど問題点の多い疾患です。

    これを解決すべく,私たちがEHPHに対する標準手術として導入したのが,meso-Rexバイパス手術です。私たちは独自の工夫として,再開通した臍静脈をこれに利用し,より簡便で安全な手術法に改良しました。

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