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ABO血液型不適合肝移植 【門脈留置カテーテルからの術中薬剤投与,移植前のリツキシマブ投与が抗体関連拒絶に有用】

No.4829 (2016年11月12日発行) P.50

小川晃平 (愛媛大学肝胆膵・乳腺外科講師)

高田泰次 (愛媛大学肝胆膵・乳腺外科教授)

登録日: 2016-11-09

最終更新日: 2016-11-08

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血液型不適合肝移植においては,移植肝において血管内皮上に発現している血液型抗原と,レシピエント血中の抗ドナー血液型抗体および補体が反応して内皮炎が惹起されることにより血流障害が生じ,術後1~2週間で広範な肝壊死をきたし肝不全に陥ったり,胆管障害から硬化性胆管炎を発症して徐々に肝機能障害が進行したりする。

抗体関連拒絶への対策として,2000年まではAB型の凍結血漿で血漿交換することにより既存抗体を除去し,術後の免疫抑制にBリンパ球による抗体産生を抑制するため代謝拮抗薬を併用していたが,効果が不十分である上,過剰免疫抑制による感染症により,1年生存率は30%程度であった。

その後,慶應義塾大学で門脈カテーテルを術中に留置し,カテーテルからステロイド,PGE1,FOYを投与し移植肝内の微小循環における播種性血管内凝固症候群(DIC)を抑制することが試みられ,移植成績が飛躍的に向上した1)。さらに悪性リンパ腫の治療薬であるリツキシマブが登場し,移植前にBリンパ球を標的とした脱感作療法を行うことにより,現在では血液型不適合肝移植の成績は血液型一致あるいは適合移植にかなり近づいた2)

しかしながら,抗体関連拒絶を100%抑制できるものではなく,長期経過で硬化性胆管炎からグラフト不全になる症例は少なからず存在する。今後,より良いプロトコールの開発が望まれる。

【文献】

1) Tanabe M, et al:Transplantation. 2002;73(12): 1959-61.

2) Egawa H, et al:Am J Transplant. 2014;14(1): 102-14.

【解説】

1)小川晃平,2)高田泰次 愛媛大学肝胆膵・乳腺外科 1)講師 2)教授

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