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原因不明の高CK血症にはどのように対処すればよいか? 【運動習慣の聴取,臨床経過の観察,検査値から原因を探る】

No.4813 (2016年07月23日発行) P.59

工藤 工 (隈病院内科医長)

登録日: 2016-07-23

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

37歳,男性。約1年前に当院を受診。血液検査でCK(CPK)値を3カ月前と1週間前に測定しましたが,1回目355 IU/L,2回目377 IU/Lでした。甲状腺の血液検査ではT3,T4,TSH,抗サイログロブリン抗体もまったく正常でした。念のため甲状腺疾患専門病院や,ほかの大病院に数箇所行ってもらいましたが「わかりません」との回答でした。また,自覚症状はなく,当院としては軽症の抑うつで受診中です。CK値は当院受付前より300 IU/L以上だったとのことです。どのような病態が疑われるでしょうか。
(兵庫県 F)

【A】

既に検査を行われたように,原因不明の高CK血症の原因のひとつに甲状腺機能低下症が存在します。この場合,甲状腺機能低下症に伴いCKのクリアランスが減少した状態ということになりますが,本症例はTSHやFT4などが正常で,甲状腺機能に異常がないため否定されます。また,本症例では1年間以上CK高値が継続していることから,心筋梗塞や脳梗塞などの急性疾患も否定してよいと考えられます。
よくみられるものは,患者さんの運動習慣やこむら返りなどです。改めてこちらから問診してみると「いつも山に登っています」あるいは「よくこむら返りが起こります」と言う患者さんもいます。
稀なものとしては,免疫グロブリンと結合したマクロCKなどがあります。この場合にはCK値は常に高値ですが,継続的に上昇し続けることはありません。また,臨床経過から積極的に疑うものではありませんが,腺癌などで上昇する場合もあります。これらの場合にはCKアイソザイムを測定することで鑑別できます。マクロCKではアノマリーがみられ,腺癌ではCK-BBが高値となります。
否定が難しい疾患としては,軽症の多発性筋炎・皮膚筋炎・筋ジストロフィーなどが挙げられます。これらの疾患は,症状がまったくない場合には経過観察をするしかありませんので,筋力低下や家族歴などに注意して,明らかな所見が存在する場合には神経内科に紹介することとなります。

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