株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ループス腸炎の診断  【腸管壁肥厚等,特徴的な腹部CT所見】

No.4812 (2016年07月16日発行) P.55

吉田雄介 (広島大学病院リウマチ・膠原病科)

杉山英二 (広島大学病院リウマチ・膠原病科教授)

登録日: 2016-07-16

最終更新日: 2018-11-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ループス腸炎は全身性エリテマトーデス(SLE)の0.2~6.4%に合併し,免疫抑制療法による適切な治療介入が必要な病態である。ただ,発熱・腹痛・嘔吐・下痢などの一般的な感染性腸炎と同様の症状で発症するため,早期診断が困難な病気のひとつである(文献1)。Kooら(文献2)の報告によると,SLEで消化器症状がある62例において,ループス腸炎と診断された例では血清C4低値がより顕著であった。また,大腸病変や膀胱尿管病変を伴っていれば再発例が多いとも言われている。
Janssensら(文献3)の報告によると,ループス腸炎150例で,腹部CT所見で腸管壁肥厚(95%),腹水(78%),ターゲットサイン(71%),腸間膜異常(71%),腸管拡張(24%)を認めた。生検を施行した例では,半数以上に粘膜下層から漿膜層にかけての血管炎の所見を認めており,主要病変が内腔側でなく漿膜側であることがわかる。したがって,内視鏡検査で異常を認めるのは60%程度と比較的少ない点に注意が必要である。
SLEの初発症状がループス腸炎となる患者もおり,回腸や空腸の腸管浮腫が著明であればループス腸炎も鑑別に入れて,SLEの分類基準を満たすかどうか追加検査を行うことが重要である。また,十分な除外診断も必要であり,同様の腸管病変を取りうる感染性腸炎,サイトメガロウイルス感染症,小腸アニサキス症,腸結核,血管性浮腫,クローン病,腸間膜動脈血栓症,リンパ腫などの鑑別が大切である。

【文献】


1) Chng HH, et al:Lupus. 2010;19(12):1404-13.
2) Koo BS, et al:Lupus. 2015;24(6):628-32.
3) Janssens P, et al:Orphanet J Rare Dis. 2013;8:67.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top