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統合失調症と喫煙 【禁煙に際して,抗精神病薬の血中濃度の変化に注意】

No.4786 (2016年01月16日発行) P.53

橋本和典 (奈良県立医科大学精神医学)

岸本年史 (奈良県立医科大学精神医学教授)

登録日: 2016-01-16

最終更新日: 2016-10-26

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一般の喫煙率が25~33%であるのに対し統合失調症患者では68~88%と高く,統合失調症と喫煙との間に何らかの関係が示唆されている。
統合失調症患者における喫煙動因として,ニコチンが認知機能や,統合失調症でみられる聴覚誘発電位P50の異常を改善させるという,ニコチンによる自己治療の可能性が示唆されており,ニコチン受容体のサブタイプのひとつであるα7ニコチン受容体がこれらの効果に関連している。さらに,この受容体を標的とした新薬の臨床試験では,統合失調症患者の認知機能や陰性症状,P50の改善効果が報告されている。
統合失調症と喫煙はニコチン依存症という病態以外に,喫煙による自己治療の効果,長期入院中の時間つぶしのためといった心理社会的な要因など,様々な喫煙行動の強化因子が関連し(文献1),禁煙は困難であると考えられているが,近年,精神科でも全面禁煙を行う病院が増加している。統合失調症患者が禁煙する際,抗精神病薬の血中濃度の変化に注意が必要である。オランザピンの濃度/用量比が,非喫煙者に比べ喫煙者で0.75(ng/mL)/(mg/日)少ないことがメタアナリシスで報告(文献2)されている。これは喫煙者が10
mg服用している場合,禁煙により7mgに減量することで同等の血中濃度が得られることとなる。統合失調症患者では,喫煙が原因となる血管障害,がんによる死亡率が高く,上記のような背景を考慮した禁煙対策が必要である。

【文献】


1) 橋本和典, 他:精神救急. 2013;16:52-6.
2) Tsuda Y, et al:BMJ Open. 2014;4(3):e004216.

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