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幹細胞の老化

No.4708 (2014年07月19日発行) P.61

近藤 亨 (北海道大学遺伝子病制御研究所幹細胞生物学教授)

登録日: 2014-07-19

最終更新日: 2016-10-26

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幹細胞は様々な細胞傷害性因子を排出・中和する能力や自己修復能力を有しているものの,生体内に終生存在するため,多様なストレスにより遺伝子変異・エピジェネティクス変異を蓄積すると考えられている(文献1)。その結果,幹細胞の組織再生能力の低下が起因となり,組織・個体の老化が始まる。実際に,脳に存在する神経幹細胞や血液細胞を生み出す造血幹細胞の増殖能力は,加齢に伴い著しく低下することが明らかにされている(文献2,3)。
過剰な細胞増殖因子(IGFなど)やストレスによるmTOR(mammalian target of rapamycin)の活性化,ミトコンドリア傷害によるROS(reactive oxygen species)の産生,炎症性サイトカイン(IL-6などを含む)によるNF-κBの活性化やDNA傷害は細胞老化を誘導する。逆に,オートファジーやサーチュイン〔nicotinamide adenine dinucleotide(NAD)-dependent protein deacetylases〕ファミリーメンバーの活性化は細胞老化を抑制することが報告されている(文献4)。
これらの知見をもとに,mTOR阻害薬やサーチュイン活性化薬が抗加齢薬として働くと期待されている。今後,新たな抗幹細胞老化薬が発見され,高いQOLの維持が可能になることが期待される。

【文献】


1) Behrens A, et al:Nat Cell Biol. 2014;16(3): 201-7.
2) Molofsky AV, et al:Nature. 2006;443(7110): 448-52.
3) Geiger H, et al:Nat Rev Immunol. 2013;13(5): 376-89.
4) Freije JM, et al:Curr Opin Cell Biol. 2012;24 (6):757-64.

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