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公正取引委員会の『混合介護の弾力化』提案をどう読むか? ─ 混合診療解禁論との異同にも触れながら [深層を読む・真相を解く(57)]

No.4827 (2016年10月29日発行) P.14

二木 立 (日本福祉大学学長)

登録日: 2016-11-01

最終更新日: 2018-05-15

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  • 公正取引委員会は9月5日に「介護分野に関する調査報告書」(以下、公取「調査報告書」)を公表し、「混合介護の弾力化」を提案しました。規制改革推進会議(本年7月で設置期限を迎えた規制改革会議の後継組織)も10月6日の第2回会議で、「当面の重要事項」として「介護サービス改革」を決定しました。この改革は「介護サービスの多様化(介護保険給付と自己負担の組合せをより柔軟に)」と「担い手の多様化(特養の担い手の拡大等)」の2つで、前者が「混合介護の弾力化」に相当します。

    そこで今回は、公正取引委員会提案の意味と実現可能性を、医療における混合診療解禁論との異同にも触れながら検討します。

    介護保険は当初から「混合介護」を容認

    まず「混合介護」と「混合診療」には違いが2つあります。根本的な違いは、医療保険では混合診療は原則禁止されているのと異なり、介護保険では2000年の制度発足以来、居宅サービス給付での「混合介護」が認められていることです。具体的には、①要介護度別「区分支給限度基準額」を超えるサービス利用と、②保険給付内サービス(以下、保険内サービス)と保険給付外サービス(同、保険外サービス)の併用です。ただし、②では両者は明確に区分して提供される必要があります。言うまでもなく、両者とも全額利用者負担です。

    もう1つは根本的違いから生まれる派生的違いで、多くの介護保険事業者や介護保険経営誌が保険外サービスの導入・拡大を早くから経営戦略としていたことです。雑誌論文で最も早いのは、『訪問看護と介護』2001年7月号の特集「介護保険外サービスに注目」(6論文)で、介護報酬が大幅に切り下げられた2012年以降は、同様の特集や論文が激増しています。公取「調査報告書」によると、保険外サービスを提供している介護保険事業者は株式会社等で57.6%に達し、社会福祉法人でも38.0%です(58頁)。この点は、医療機関の多くが差額病床以外の保険外サービスを提供していないのと対照的です。

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