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水素水の動脈硬化予防効果は?

No.4789 (2016年02月06日発行) P.68

玉木直文 (徳島大学大学院医歯薬学研究部予防歯学分野 准教授)

登録日: 2016-02-06

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

最近,水素水が動脈硬化予防になるなどと話題になっていますが,どの程度エビデンスがあるのでしょうか。 (東京都 F)

【A】

生体への水素の作用を研究する水素医学が提唱されています。水素に関する研究が注目されるきっかけとなったのは,2007年のNature Medicineに掲載された論文(文献1)です。その内容は,脳梗塞モデル動物に水素ガスを吸引させ,水素が抗酸化作用を示すことで虚血再灌流障害が改善したということでした。それ以降,水素の研究が活発に行われるようになり,今まで350報以上の学術論文が報告されています。水素の摂取方法として,初期の水素ガスの吸入に加え,水に水素を溶解した水素水の飲用なども広がってきました。その治療や予防に対する効果は多岐にわたり,ほとんどの臓器の多様な疾患について研究されています。現在では動物実験のみならず,いくつもの臨床試験や医師主導型治験も始まっており,その研究成果も徐々に報告されはじめています。
水素水の抗酸化作用としては,活性酸素種の中でも酸化力が非常に強く細胞障害性が高いとされているヒドロキシルラジカルやペルオキシナイトライトを消去する直接作用が知られています。また,間接的な抗酸化作用として,カタラーゼ,スーパーオキシドジスムターゼやヘムオキシゲナーゼ-1などの抗酸化酵素を活性化することで酸化ストレスを軽減するメカニズムもわかってきています(文献2)。抗炎症作用としては,様々な動物実験において炎症性サイトカインの発現を低下させたとの報告があります。さらに,二重盲検法の臨床試験において,慢性炎症性疾患である関節リウマチ患者が水素水を摂取することで症状が改善したことが報告されました(文献3)。また,動脈硬化モデル動物に水素水を継続的に摂取させると,アテローム性動脈硬化と酸化ストレスが抑制されたことが報告されています(文献4)。ほかにも,メタボリックシンドローム予備軍の被験者に水素水を摂取させると,LDLコレステロールレベルや酸化ストレスが改善したなどの効果も認められています(文献5)。
以上のように,水素水の摂取による様々な病態への効果については多数のエビデンスに裏付けされており,さらに日進月歩で研究が進んでいます。また今までのところ,動物実験や臨床試験においても重篤な副作用は報告されていません。今後,水素医学という考え方が広まり,多くの病気の治療や予防に適応されていく可能性もあります。

【文献】


1) Ohsawa I, et al:Nat Med. 2007;13(6):688-94.
2) Ohta S:Pharmacol Ther. 2014;144(1):1-11.
3) Ishibashi T, et al:Int Immunopharmacol. 2014;21(2):468-73.
4) Ohsawa I, et al:Biochem Biophys Res Commun. 2008;377(4):1195-8.
5) Song G, et al:J Lipid Res. 2013;54(7):1884-93.

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