株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

甘草を含有する漢方薬の副作用の頻度 【偽性アルドステロン症の発生頻度は用量に依存して急激に増加】

No.4820 (2016年09月10日発行) P.52

並木隆雄 (千葉大学和漢診療学診療教授)

登録日: 2016-10-13

最終更新日: 2016-10-19

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

漢方薬の副作用で,最も有名(医師および薬剤師国家試験にも出題される)で遭遇しやすいものに,甘草による偽性アルドステロン症がある。甘草は漢方薬エキス製剤の7割に含まれるため,遭遇しやすい。甘草の主成分にグリチルリチン(2~6%)があり,これが腸内細菌で代謝されてグリチルレチン酸に変わる。このグリチルレチン酸がコルチゾールをコルチゾンに変換する11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 2という酵素を抑制する。すると鉱質コルチコイド作用のあるコルチゾールが増加するため,浮腫,高血圧,低K血症が発症し,低K性ミオパチーと思われる四肢の脱力などを発症すると考えられている1)。一般に,患者の40%は投与後3カ月以内に発症すると言われており,中止した2日後には改善すると考えられている。男女比は1:2で女性に多い。また,利尿薬などを併用していると発症しやすい。

このたび,漢方薬による甘草製薬の副作用について書かれた論文2)におけるメタアナリシス解析によって,用量依存性の傾向があることがわかった。甘草1gでの副作用の発生率は1%程度であるのに対し,6gになると11%になるなど,急激に頻度が増加した。特に甘草の含有量が多い芍薬甘草湯は,長期に服用する場合で1日1包程度にすることが,偽性アルドステロン症の発症予防に有用なことが明らかになった。

【文献】

1) 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル. 偽アルドステロン症. 2006. [http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1019-4d9.pdf]

2) 萬谷直樹, 他:日東洋医誌. 2015;66(3);197-202.

【解説】

並木隆雄 千葉大学和漢診療学診療教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top