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日本が世界をリードする治療─バルーン肺動脈形成術 【日本の慢性血栓塞栓性肺高血圧症診療は世界から注目されている】

No.4797 (2016年04月02日発行) P.50

川上崇史 (慶應義塾大学循環器内科)

福田恵一 (慶應義塾大学循環器内科教授)

登録日: 2016-10-07

最終更新日: 2016-10-28

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慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は,器質化血栓が肺動脈を広範囲に狭窄・閉塞し肺高血圧症を呈した状態であり,国の指定難病になっている疾患である。既存の治療法ではすべてのCTEPH症例に十分な改善が得られないことが問題である。
バルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)は,2001年に米国のFeinsteinらが報告した後,わが国で確立したカテーテル治療である。12年の日本からの報告が発端となり,15年12月の時点で計13報の論文が報告され,うち10報が日本からである(短報は除外)。
要約すると,対象症例は12~103例で,平均肺動脈圧は術前38.9~45.4mmHgから術後17.6~31.8mmHgへ低下・改善し,周術期死亡率は0~3.4%であった。これは,Feinsteinらの初期報告(周術期死亡率5.5%,肺障害発生率61%)と比べても,安全性・有効性ともに大きく改善していた。また,多施設レジストリーである14年の「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するBPAの適応と実施法に関するステートメント」では,肺障害発生率は18%,周術期死亡率は3.9%と報告された。
BPAは施設間で手技や合併症対策が標準化しておらず,安易に取り組める手技ではないが,適切な患者選択,手技の向上,専門的な術後管理により,低侵襲で著しい治療効果を得ることが可能である。BPAを含めた日本のCTEPH診療は世界から注目されている分野であり,今後も日本から多くの知見が報告されることが期待される。

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