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【一週一話】涙活!脳のストレス緩和

No.4766 (2015年08月29日発行) P.47

有田秀穂 (東邦大学医学部生理学講座名誉教授/セロトニンDojo代表)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-14

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  • マスコミで取り上げられるようになって,2年が経つイベント「涙活」。現在も国内外から取材が続いている。仕掛け人は,「離婚式」というユニークなイベントを展開してきた寺井広樹氏。ビデオを見たり,語り部の話を聴いたりして,人は感動して涙を流す。そして泣き終わった後に,スッキリとした気分を味わう。その行動をストレス解消に活用して,「涙活」としてイベント化したものである。ストレス社会において,新しい文化活動として注目されている。

    人はなぜ感動して泣くのか。これは哲学的テーマであった。筆者1)は10年くらい前にそれを脳科学の面から解析し,興味深い結果を得た。その成果は,専門家への発表にとどまらず,一般向けにも『脳からストレスを消す技術』(サンマーク出版)などで発信してきた。それを読んだ寺井氏から「涙活」イベントを提案され,筆者が科学的なバックグラウンドを提供することで事業がスタートし,今日に至っている。

    前述の脳科学的基礎研究では,被験者に過去に「泣けたビデオ」を選んでもらい,そのビデオを見ている最中に,局所脳血流変動を近赤外線分光分析装置(NIRS)で連続記録した。流涙の瞬間は眼球運動記録と顔のビデオモニターで確認した。その結果,前頭前野内側部の血流が流涙に先行して短時間激しく増加することを発見した。この脳領域は「共感」によって賦活されることが,最近の脳画像解析で明らかになっている。すなわち,ビデオを見て「共感脳」が激しく興奮すると,それが引き金になって,脳が突如異常な状態に切り替わり,泣くという特異な行動(流涙,泣き顔,泣き声など)が誘発されると解釈された。

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