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(3)化膿性脊椎炎およびその後遺症に対する手術治療─経皮的後方固定の有用性[特集:化膿性脊椎炎にどう対処するか]

No.4963 (2019年06月08日発行) P.30

長田圭司 (和歌山県立医科大学整形外科学講座)

山田 宏 (和歌山県立医科大学整形外科学講座教授)

登録日: 2019-06-10

最終更新日: 2019-06-05

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近年,高齢者や易感染性宿主(compromised host)の増加により,保存治療抵抗性の化膿性脊椎炎が増加している

脊椎の安定化が感染の鎮静化に非常に有効であることから,化膿性脊椎炎に対する脊椎インストルメンテーション手術の報告も散見される

手術的加療の目的は感染部位の安静,脊椎アライメントの保持,また,脊椎固定施行後,早期離床により廃用性障害を予防することである

経皮的椎弓根スクリュー(PPS)固定を行う際,テリパラチド製剤(PTH)を併用することで,さらなる成績の向上が期待される

1. 化膿性脊椎炎に対する治療戦略

従来,化膿性脊椎炎に対する手術では,金属インプラントの使用は感染の拡大をまねきかねないことから禁忌と考えられてきた。しかし近年,脊椎の安定化が感染の鎮静化に非常に有効であることから,化膿性脊椎炎に対する脊椎インストルメンテーション手術の報告も散見される。死腔が生じない経皮的椎弓根スクリュー(percutaneous pedicle screw:PPS)の登場や抗菌薬治療の進歩も,インストルメンテーション手術の成功を後押ししている。本稿では化膿性脊椎炎に対してPPSを用いた外科的治療に関して述べる。

2. 手術的加療の動向

近年,高齢者や易感染性宿主(compromised host)の増加により,保存治療抵抗性の化膿性脊椎炎が増加している。脊髄圧迫や馬尾レベルでの硬膜圧迫を伴った進行性の神経脱落症状の際は,手術の絶対的適応と考えられる。細菌学的,病理学的な診断のため,また2~3週の保存的加療においても臨床症状に改善のない場合は,相対的適応として手術加療が望まれる。高度な骨欠損を伴っている症例の手術加療は,前方アプローチによる感染巣搔爬,前方支柱再建がゴールドスタンダードである。しかし,大きな手術侵襲が問題となるため,近年は化膿性脊椎炎に対して経皮的後方進入による治療が行われるようになった。

長田らは経椎間孔からの経皮的病巣搔爬およびドレーン挿入によって,良好な治療成績を報告している1)。Deningerらは罹患椎体を含め,PPSによる後方固定を施行した全例でC反応性タンパク(C-reactive protein:CRP)が陰性化したと報告している2)。また化膿性脊椎炎に対し,PPSによる後方固定を施行した報告が散見される。以上より,化膿性脊椎炎に対し,感染巣の搔爬を行わなくとも後方固定により罹患椎体を制動することで感染を沈静化できる可能性が示唆される。

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