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(4)アレルギー性鼻炎における抗ヒスタミン薬の使いわけ[特集:薬理学的にみる非鎮静性抗ヒスタミン薬の使用法]

No.4945 (2019年02月02日発行) P.42

川内秀之 (島根大学医学部耳鼻咽喉科学教室教授)

登録日: 2019-02-04

最終更新日: 2019-01-30

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アレルギー性鼻炎患者の薬物療法において,抗ヒスタミン薬は中心的な薬剤である

抗ヒスタミン薬の選択においては,非鎮静性抗ヒスタミン薬が推奨される

薬物相互作用の観点から,体内で代謝されるpro-drugは単剤使用が原則である

1. わが国における抗ヒスタミン薬の開発の変遷

アレルギー性鼻炎治療薬の中心となる抗アレルギー薬は,メディエーター遊離抑制薬とメディエーター拮抗薬に分類されるが,抗ヒスタミン薬はメディエーター拮抗薬の範疇に分類される。肥満細胞上でのアレルゲンと特異IgE抗体の架橋によって誘導されるヒスタミンの遊離がアレルギー性鼻炎の症状発現の中心であるが,ヒスタミンは産生細胞自身や近傍の標的細胞上の受容体を介して,オートクラインあるいはパラクラインに作用することが知られている。上気道のアレルギー性炎症(アレルギー性鼻炎,喘息)の治療において,最初に使用されたのは,1942年にHalpernが開発したphenbenzamineであった。その後,多くの研究開発が進み,第一世代の抗ヒスタミン薬であるジフェンヒドラミン,プロメタジン,chlorpheniramineが開発された。

しかし,これらの薬剤は,中枢神経系に副作用とされる鎮静作用,眠気,倦怠感などをきたし,さらには,ヒスタミンと類似の構造を持つムスカリン受容体にも結合するため,抗コリン作用としての,口渇,粘膜乾燥感,尿閉,便秘などをきたすことが指摘された。そのため,これらの副作用を軽減すべく,選択性の高い安全なH1拮抗薬の開発が進み,副作用(中枢神経作用)の少ないH1拮抗薬である第二世代の抗ヒスタミン薬が続々と開発され登場してきたのは周知の通りである。第一世代と第二世代の名称は,もともと,中枢へ移行する際に通過する血液─脳関門への影響や,多くは脂溶性(lipophilic)の低下をめざすといった,化学的性質によって区別をしているものと考えられる。

副作用における問題点として,神経や筋肉に分布するイオンチャネルに対する阻害作用も考慮に入れなければならない。第一世代の抗ヒスタミン薬にはこの阻害作用もあるが,第二世代の抗ヒスタミン薬には,第一世代に比べて,この阻害作用は少ないとされている。さらに第二世代の抗ヒスタミン薬はH1受容体に対する選択性が高く,常用量が比較的少量となっているため,抗コリン作用による副作用の発現頻度が低い。さらに,中枢神経抑制作用や抗コリン作用のない抗ヒスタミン薬の開発が進められ,現在では,脳内より末梢のH1受容体に選択性が高く,脂溶性が低く血液─脳関門を透過しにくい,肥満細胞からのメディエーター遊離抑制作用も併せ持つ,いわゆる新世代のH1受容体拮抗薬と呼ばれる抗ヒスタミン薬が登場している。

抗ヒスタミン薬と他の薬剤との間で報告されている有害な薬物相互作用については,「鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)」において,木津らが51~57ページ1)で詳細に報告しているので参照して頂きたい。注意すべき相互作用は,抗ヒスタミン薬処方時の中枢抑制薬の併用,あるいはアルコール飲酒による中枢抑制作用の増悪である。高齢者ではこの増悪作用が出やすい傾向にあり,昏睡,転倒などで思わぬけがをすることがあるので注意が必要である。

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