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バリデーション技法を診察で使いこなす[認知症患者とのコミュニケーション技法(2)]

No.4738 (2015年02月14日発行) P.45

梁 勝則 (林山クリニック希望の家院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-09

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  • バリデーション技法は,米国の認知症専門MSWナオミ・フェイルが30年の歳月をかけてカウンセリングの考えをもとに創り出した認知症患者とのコミュニケーション技法である。この方法は,認知症患者とコミュニケーションを行う上で非常にシンプルでかつ強力な効果を有し,もともとが介護スキルであるため,医師にとって習得は容易である。
    バリデーションの「バリ」はバリュー(value:価値)に由来する。すなわち,認知症患者を価値ある存在として認め,彼らの尊厳を強化するということである。認知症患者は適切なケアを行わなければ必ず悪化する。バリデーション技法によって,心理的・社会的欲求が満たされた認知症患者は認知症の悪化が抑制でき,植物状態まで退行することはあまりないとされる。残念ながら,米国流の家元制度は高額である。とりわけ,介護職にとっては金銭的ハードルの高いセミナーをいくつか受講しなければ講師として広めることができないという制約のために,導入されて20年近く経つにもかかわらず,まったくと言ってよいほど介護界に膾炙していない1)。前回(No.4737,p41参照)紹介したユマニチュードはフランス発のものであるが,既に同じようなリスクを抱えているように見受けられる。質を担保するために家元セミナー制度を設けるという理屈は理解できるが,角を矯めて牛を殺す(ごく少数の医療・介護職だけが実践している)ことで,絵に描いた餅(多くの認知症患者には適応されない)になるのではないかと危惧している。
    バリデーション技法は全部で14あるが,日常臨床で役に立つのは技法2,3,7,8,9,11である(表1)。実際の臨床場面に即して,順不同に説明する。

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