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■NEWS  医師の働き方改革で医療界が意見書 過労死ライン超える時間外労働の「特例」を提言

No.4917 (2018年07月21日発行) P.21

登録日: 2018-07-13

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医師の働き方改革に関する議論が進んでいる。厚生労働省の検討会は9月以降、応召義務や時間外労働の上限時間など具体的な論点について議論を深め、2019年3月に最終報告書を取りまとめる予定だ。秋からの本格的な議論に先立ち、日本医師会や病院団体、勤務医で構成する「医師の働き方検討会議」は今月、医療界の意見を集約した「意見書」を取りまとめた。時間外労働時間の上限設定に、いわゆる過労死ラインを超える「特例」を設けることなどを提言する内容だ。厚労省は意見書を踏まえ、今後の議論を進めていく方針。

医師の働き方検討会議は日本医師会が今年4月に設置。日医の「医師の働き方検討委員会」が4月にまとめた報告書を基に3回の会合を行い、議論を取りまとめた。

意見書はまず、医師の働き方改革の基本理念として「医師の健康と地域医療の両立」を掲げ、現行法令に基づく医師の健康管理の徹底を求めた。一方で、患者の生命を預かるなど医師と医療の特殊性にも言及し、一般業種とは違った抜本的な制度改革が不可欠だと強調した。

■勤務間インターバルと連続勤務時間規定のルールの設定が有効

具体的には、長時間労働是正のための仕組みについて、医師には応召義務があるため、単純な時間外労働の規制は実効性が伴わないと指摘。その上で、勤務間インターバルと連続勤務時間のルールを定め、そこから遵守可能な時間外労働時間を算出することが現実的な手段として有効だと提案した。

勤務間インターバルとは、勤務終了後から次の勤務開始時までの連続休息時間のこと。「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」が6月29日に改正されたことにより、勤務間インターバルに取り組むことが事業者の責務となった。連続勤務時間は日本で法的規制はないものの、欧米では規制が導入されている。

■過労死ラインを超える「特例」で対応する場合は第三者機関が承認

時間外労働時間の上限については、労働時間が過度に増加することを防ぐ歯止めとして、「医師の特別条項」を設け、省令で規定する必要性を指摘。上限時間については、いわゆる「過労死ライン」とされる脳・心臓疾患の労災認定基準(発症前1カ月当たり100時間を超える時間外労働など)を基に設定することを提案した。

さらに、「医師の特別条項」を超えざるを得ない場合も想定し、その際には「特例」で対応する考えも示した。特例の時間の目安は精神障害の労災認定基準(発症前1カ月に160時間以上の時間外労働など)や海外の事例などを参考に今後検討するとし、特例で対応する場合には、第三者機関の承認を得ることとした。

第三者機関について意見書は、各都道府県の医療勤務環境改善支援センターや地域医療支援センター等を中心とした組織とすることを提案。これに病院団体や都道府県医師会、都道府県社会保険労務士会、都道府県衛生部局などが参加し、医療機関の勤務環境の改善支援や医師確保への支援などを行うとした。

■助教も専門業務型裁量労働制の適用に

このほか、研究業務などを対象とする「専門業務型裁量労働制」の適用拡大も提案。現在大学病院では、教授・准教授・講師に適用されているが、臨床研究を活性化する必要性など昨今の大学病院を巡る状況から、助教にも適用できるよう検討することが不可欠と強調した。 意見書は最後に、現行法令の枠組みを過度に意識すると、医師の働き方にあった制度が構築できないおそれがあると懸念。そのため、意見書に盛り込んだ提言は「法令を働き方に合わせる」という発想でまとめたと説明し、現行法令にこだわらない柔軟な議論を関係者に求めた。

さらに、医師の働き方の実態に合った制度構築を進めるために、今後検討が必要な具体的項目として、①医師の健康確保策、②自己研鑽、③宿日直、④院外オンコール待機、⑤休日、勤務間インターバル、連続勤務時間、⑥「医師の特別条項」と「医師の特別条項の『特例』」、⑦医師の専門業務型裁量労働制、⑧研修医等、⑨第三者機関、⑩女性医師支援、⑪地域住民における医療への理解、⑫労働関連法令の幅広い見直し・医事法制との整合性確保―の12項目を挙げた。

日本医師会の松本吉郎常任理事は11日の日本医師会定例会見で、「意見書」で提言した過労死ラインを超える「特例」について「過労死ラインを超えて働く医師が相当数いるため、現実的に過労死ラインを上限にすると地域医療が崩壊し、救える命が救えなくなる」と訴えた。

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