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今後の再生医療における耳介再建の展望と可能性【耳介再建に必要な量の軟骨細胞培養が可能に。標準治療が困難な症例での応用に期待】

No.4916 (2018年07月14日発行) P.56

四ツ柳高敏 (札幌医科大学医学部形成外科教授)

矢永博子 (医療法人Yanaga CLinic・組織再生研究所院長)

登録日: 2018-07-17

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  • これまで再生医療により形成された軟骨を用いた臨床応用が試みられてきました。特にインパクトの点で,小耳症に対する耳介の全再建が目標とされることが多いようです。しかし,再生軟骨の厚み,強度,変形,吸収などの点で,いまだ臨床に利用するには多々問題点を有しているのが現状と思います。最近ではiPS細胞を利用した試みも始まっていますが,個人的には実際の生体とは異なるin vitroでの再生には限界があるような印象を持っています。今後の再生医療による耳介再建の展望と可能性についてご教示頂けましたら幸いです。
    Yanaga CLinic・組織再生研究所・矢永博子先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    四ツ柳高敏 札幌医科大学医学部形成外科教授


    【回答】

    再生医療は,ヒトから自家組織の一部を採取して,体外でヒトの細胞を培養して増殖させることで組織を再構築した後に,再び体内へ移植するという治療法です。よって,従来行われてきた自家組織をそのまま移植する治療とは異なる治療概念です。また,耳介再建に用いる培養耳介軟骨細胞は分化細胞なので,1方向性に軟骨細胞として分化成熟するのに対して,iPS細胞やES細胞は未分化細胞で多分化能を持つため多種の細胞へ分化することが,大きく異なっています。

    これまで,臨床的に耳介再建に必要な十分量の軟骨細胞を培養することが難しいとされてきました。ですから培養軟骨細胞が組織を再構築できるのかという疑問が生じます。ところが軟骨組織から軟骨細胞を単離して取り出し,脱分化させて増殖させた後に重層化させると,in vitroで再分化へ向い,軟骨細胞が組織様に再構築されます。その後,重層化した軟骨細胞をいったん生体に移植すると,in situで周囲組織を利用した分化誘導が起こり,その場で軟骨形成とmatrix形成が行われ,大きな軟骨組織ブロックが得られるということがわかりました。筆者は,この方法をtwo-stage transplantation法と名付けました。

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