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株主に決算書を送付しない株式会社への対抗手段は?【会計帳簿の閲覧,定時株主総会招集の請求が可能。応じない場合は裁判所に上申書提出】

No.4914 (2018年06月30日発行) P.62

堀 克巳 (駅前通り法律事務所 弁護士)

登録日: 2018-06-27

最終更新日: 2018-11-28

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同族の株式会社(資本金1000万円,非上場)株を2割程度保有しています。業績低迷もあり,ここ十数年無配当です。決算書を送付してこないことがあり,催促すると送付してくることもありますが,無視されてしまう場合もあります。会社法では,毎年株主総会を開く義務があり,罰則もあると思います。決算書を催促しても無視されるような場合には,具体的にどのような対抗手段があるのでしょうか,ご教示をお願いします。

(群馬県 K)


【回答】

ご指摘のように,会社法では,取締役は,毎事業年度の終了後一定の時期に株主総会を招集し(会社法第296条1項・定時株主総会),計算書類(貸借対照表,損益計算書等)および事業報告書ならびにこれらの附属明細書を提出し,承認を得なければなりません(同法第438条)。取締役がこの定時株主総会を招集しなかったときは,100万円以下の過料という制裁もあります(同法第976条18号)。

決算書の送付を無視された場合の対抗手段ですが,まず,総株主の議決権の3/100以上または発行済株式の3/100以上の数を保有する株主は,会社に対して会計帳簿の閲覧を請求することができ,会社は正当な理由なくこれを拒むことができません(同法第433条)。会社が株主の請求に応じない場合は,訴訟により会計帳簿の閲覧を求めることとなります。

決算書の内容を知るだけの目的を達成するには,この会計帳簿の閲覧請求で足りますが,決算書の内容について,取締役から説明を受けたり質問したりするには,株主総会の招集を求める必要があります。定時株主総会を招集しない場合は,取締役に対する過料の制裁を求める上申書を裁判所に提出して,この招集を促すことが考えられます。それでも招集しない場合は,総株主の議決権の3/100以上の議決権を6カ月前から引き続き保有する株主は,取締役に対して招集を請求し,さらに取締役がこれに応じない場合は,裁判所の許可を得て自ら株主総会を招集することもできます(同法第297条)。

質問者は,発行済株式の2割程度を保有しておられるので,会計帳簿の閲覧請求および株主総会の招集請求等ができます。

【回答者】

堀 克巳 駅前通り法律事務所 弁護士

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