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(1)就労年齢における発達障害の特徴[特集:職域における発達障害者への対応と支援]

No.4910 (2018年06月02日発行) P.28

岩波 明 (昭和大学医学部精神医学講座教授)

横井英樹 (昭和大学附属烏山病院)

五十嵐美紀 (昭和大学附属烏山病院)

登録日: 2018-06-04

最終更新日: 2018-05-30

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成人期における発達障害は,自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠如多動性障害(ADHD)に大別される

ASDは対人関係の障害と常同的な行動パターン,ADHDは不注意と多動を主な症状とするが,両者の重なりは大きく鑑別困難な例も少なくない

ASDもADHDも就労年齢において初めて不適応症状を示し,医療施設を受診する例が多い

治療は,投薬に加えて心理社会的治療を行うとともに,就労移行支援事業や障害者雇用の制度を利用して社会復帰を図ることが重要である

1. 成人期の発達障害

発達障害とは,胎生期に起因する脳の機能障害に基づく生まれつきの障害の総称であり,その特性は生涯にわたって持続する。発達障害は大きく3つにわけられ,①コミュニケーションおよび相互関係の障害,同一性のこだわりや興味・関心の狭さを主症状とする自閉症スペクトラム障害(自閉スペクトラム症,autistic spectrum disorders:ASD),②不注意,多動性,衝動性を主症状とする注意欠如多動性障害(注意欠如多動症,attention deficit hyperactivity disorder:ADHD),③読む・書く・計算するなどの特定の分野の習得と使用に著しい困難を示す限局性学習障害(限局性学習症,learning disabilities:LD)がある。

発達障害は長い間,児童精神科の分野と考えられていたため,知的能力に遅れがない発達障害は見過ごされてきた経緯があり,現在もそうした傾向は残っている。自らの特性や対処法を学ぶことなく大きな問題なく学校生活が送れた者でも,主体性やコミュニケーション力が求められる就職などの環境変化に伴い,その特性から周囲に適応することができなくなることは稀ではない。そのような不適応の中で深く傷つき,ようやく「発達障害」という言葉と出会い,診断を受けた,というケースも少なくないのが現実である。

米田1)によると,発達障害を持つ成人が初診に至る経緯は大きく3つあり,①幼少期に医療機関などで診断を受け継続的なフォローが中断した,②成人期になって自分から発達障害の存在を疑って来院した,③成人期になって家族や上司に促されて受診したケースがある。近年,発達障害に関する情報がテレビ等のメディアで増加したことや,簡易に発達障害の特徴をチェックできるインターネットサイトなどの影響で「成人の発達障害」が広く知られるようになった。それに伴い幼少期には支援につながらなかった「知的能力に遅れがなく,成人期になって初めて問題が表面化したASD,ADHD」の事例が増加している。

発達障害に対する治療では,ASDに対しては,薬物による根本的治療はない。ADHDに対しては有効な治療薬があり劇的な改善を示すケースがあるが,一方で不十分な治療効果や副作用に耐えることができずに未反応者となる者が20~50%存在し,反応者においても効果は十分ではなく,ADHD症状の50%以下の治療効果しかないという指摘もある。また,成人の発達障害者において,それまでの生活で身についた自己肯定感の低さを改善させることは容易ではない。自身の特性を理解し,自己肯定感を改善させ,精神的・社会的課題を解決するために,心理社会的支援の持つ役割は非常に大きい2)。そのため,薬物療法と心理社会的治療とのバランスの取れた治療が推奨されている3)4)

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