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頭頸部癌における強度変調放射線治療の有用性【生存を犠牲にすることなく,晩期唾液腺機能を温存できる】

No.4910 (2018年06月02日発行) P.55

中村和正 (浜松医科大学放射線腫瘍学講座教授)

古平 毅 (愛知県がんセンター中央病院放射線治療部部長)

登録日: 2018-05-30

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  • 頭頸部癌に対して近年,強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:IMRT)が実施されるようになっていますが,従来の照射法と比べてどのような利点があるのでしょうか。また,頭頸部癌の放射線治療の最新のトピックスについて,愛知県がんセンター・古平 毅先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    中村和正 浜松医科大学放射線腫瘍学講座教授


    【回答】

    IMRTは高精度放射線治療の方法のひとつで,X線線束の強度を変調して多方向から照射し,複雑な形状の標的にも均一で高い集中性の線量分布を作成し,また隣接する正常臓器線量の低減も達成できます。わが国では頭頸部癌IM RTは先進医療として一部施設でスタートし2008年に保険収載され,それ以降,日常臨床への普及が進んできました(2010年には限局性固形がんに適応が拡大)。この照射法は治療装置や計画コンピュータのハード面の進歩に伴って実用性が大幅に改善されるとともに普及も進んできましたが,同時に機器や放射線治療計画の品質管理・品質保証が重要となるため,実施は2名の専従の放射線腫瘍医と1名の専従の医学物理士または5年以上経験を有する診療放射線技師が施設要件として求められます。

    IMRTは当初7~9門の固定多門照射で行われ,強度変調を行うマルチリーフコリメータの制御法でstep and shoot法とsliding window法の代表的な技術が使用されました。近年では強度変調回転照射(volumetric modulated arc therapy:VMAT)が主流になっています。この方法は照射方向が体軸周囲を回転することにより多方向から照射することができ,線量分布の改善や照射時間の短縮のメリットがあると報告されています。なお,ヘリカルトモセラピーはVMAT型のIMRT専用治療装置です。

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